、そしてMLBではついに「ヤギの呪い」を解いたシカゴ・カブスの108年ぶりのワールド・シリーズ優勝。イチローの通算安打記録カウントダウンもあって、野球ファンにとっては忘れられないシーズンでした。
さて、今回は「リーダーを生む優れた組織」の話題です。強烈なリーダーシップを持ったトップが引っ張ってチームを鼓舞し、目覚ましい成績を上げる。これも一つの優秀な組織の形態です。しかし僕は常々、「リーダーが次のリーダーを育てて、その組織が継続的に好業績を上げる、もしくは他組織に人材を供給していく」、そんな組織こそ真に優れた組織ではないかと考えています。
ここで無理やり話を野球に戻すわけですね。近年、ホークスとファイターズの隆盛でやや影が薄くなっていますが、黄金時代の西武ライオンズは、「リーダーを育成した最強の組織」なのではないかと、このオフの人事も見ながらふと考えたのです。
ここでいう黄金時代は「広岡達朗監督~森祇晶監督」の指揮下で13年間のうち優勝11回、3位2回という驚異の成績を残した1982年~1994年と定義します。
この時代の西武は、北の湖ではないですが「憎らしいほど」強かった。あまりの強さと、ちょっとズルい選手獲得方法などで僕は完全にアンチになったのですが、やはりすごかったと認めざるを得ない。
なぜならば、この時代にレギュラーを張っていた、もしくは主力投手であった選手たちが続々とライオンズや他球団の監督になっているのです。
名前を挙げると(敬称略)、
<西武生え抜きで西武監督> 東尾修、伊東勤、渡辺久信、田辺徳雄、辻発彦(来シーズンより)
<西武出身で他球団監督> 石毛宏典(オリックス)、秋山幸二(ソフトバンク)、工藤公康(現ソフトバンク)、森繁和(来シーズンより中日)、
<外様> 田渕幸一(阪神から移籍。ダイエー監督)、田尾安志(中日から移籍、楽天初代監督)
選手としてはレギュラーになり切れず広岡監督就任時には引退していた伊原春樹も三塁コーチとしての辣腕発揮で、この列に加えてもいいでしょう。
川上監督のV9巨人も、森、長嶋、王、堀内、土井、高田が監督になっていますが、西武黄金期には及ばない。
広岡監督、森監督は、当時「管理野球」と呼ばれ、選手の私生活にまで事細かに口を出すやり方には批判も多かったし自分もなんとなくイメージで嫌っていました。やっぱり「野武士軍団」とか「イテマエ打線」みたいに、ものすごい選手のものすごい個人パフォーマンスで勝っちゃうチームのほうが見ていて面白い。でも脆い。超絶リーダーシップ監督(例えば星野仙一)は劇薬的に低迷チームを強くするけれど、なかなか連覇できないし黄金時代を作れない。
ライオンズの管理野球は、「組織のために自分で考えて自己管理できる人材」を徹底的に育てるための管理だったのではないでしょうか。勝ち続けるためにやるべきこと、やってはいけないことを叩きこむ。結果が出て納得するからそれがチームの個性となって定着し、引き継がれていく。黄金時代初期には、田渕や土井正博や山崎裕之みたいな外様のベテラン、大選手にまで容赦なかったといいますが、それができなくて成果を上げられないチームや会社は多いように思います。
あの頃の西武ライオンズは、いまでも、どんな組織にあっても参考になる稀有な例なのではないでしょうか。
今回は、若い人には分からないだろうな、と思いつつどうしても書きたくてマニアック記事になってしまいました。
わが中日ドラゴンズは最下位の辛酸を舐める屈辱のシーズンでしたが、王者西武ライオンズ出身でカリブ海方面の人材調達に強い森繁和新監督の下、巻き返しを期待しています!