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記憶を無意識に押し込んでしまう「抑圧」:フロイトの「心の構造」

心に「しなやかを」を 2018/03/24(土) 14:45

最近暖かくなって春を感じます。おかげで「春眠暁を覚えず」のように朝なかなか夢の中か心地よくてすっきりとは起きられません。人間も動物と同じように春か夏にかけて活動的になるため、肉体的なエネルギーを保持するために睡眠が長くなるようです。また、活性化するために交感神経が優位になり、夜眠るのが遅くなり、朝が自然と辛くなるという場合もあるようです。皆さんは如何でしょうか。 

ちなみに夜の睡眠をスムースに導入するためには、朝日をしっかり浴びることで体内時計をしっかり設定することが大事とのことです。夜の睡眠は、その日の朝から始まっているようです。

 

「夢」と言えば有名なのがフロイトです。誰もが知っている有名な心理学者で、現代でも通じるものがあります。(一部は否定されているものもありますので、明示します)

 毎日患者と接する医者としてフロイトは、人間の悩みの源泉は「無意識」にあるとし、その無意識を理解するために、「自由連想法」「遊戯療法」を考え出しました。

 

フロイトは、人の心を氷山に例え、意識されているのは一部で、大部分は無意識下に隠れていると主張しました。

心を、「意識」「前意識」「無意識」の3つの部分に分けて考えました。(無意識についてフロイトが初めて提起したのではないようです)

 「意識」は、毎日発行される新聞記事のようなものです。その意味は、世間では様々なことが起こっていますが、そのすべての出来事が新聞に載るのでなくその中の一部の出来事が新聞記事となります。個人の世界で、この新聞記事が「意識」のようなものです。個人においても様々な事件は起こっているのですが、すべてを意識することはできません。むしろ、意識しないことの方がはるかに多いものでしょう。

 

 意識と無意識の間にある「前意識」は、この思い出そうとすると思い出せる部分を言います。例えば、ある人との待ち合わせする約束した時間を忘れてしまっていたとします。この約束は思い出すことができます。

しかし、「何故、その約束を忘れてしまったか」は、いくら思い出そうとしても思い出せません。ひょっとするとその人をどこか嫌っているかもしれません。このように抑圧された心の奥底の部分を「無意識」と言います。

 

心の動きをより上手く説明できる「心的構造論」というものを提唱しました。
フロイトの考えた心の構造は、「エス(イド)」という本能の塊と、倫理観の守護「超自我」、その両者を調整し、その結論を行動に導く「自我」の3つで構成されています。

そして、これら三つのバランスが壊れることが、精神的病気の一因であり、「抑圧」や「防御規制」が代表的なもので、その診断と解決の糸口は、「夢」にあると考えたのがフロイトです。

記憶を無意識に押し込んでしまう「抑圧」:フロイトの「心の構造」

上図は、wikipediaから引用させてもらいました。

 

今では、フロイトのことを非科学的と言う人もいますが、当時、患者の観察と臨床実験だけで、人間のこころのメカニズムを説明する理論を組み立てたということはすごいことです。

これが「エス(イド)」「自我」「超自我」の理論で、この三者の脳内会議によって、自分の心を決定していくというのがフロイトの理論です。

「エス(イド)」は、本能のままに行動します。そして、エネルギーの固まりです。エスは自らの欲求を満たすことだけを目指し、「快楽原則」と呼びます。フロイトは「エスは混沌と沸き立つ興奮に満ちた釜である」と言っています。(脳科学で言う偏桃体等の脳の働き)

「自我」とは、自分で「自分と認識している心の働き」で、「意識」と「無意識」にまたがっています。「自我」はエスから成長したもので、「社会適応するための心の働き」です。(脳科学で言う前頭葉の働き)

「自我」=「自己イメージ」とするのは間違いで、自己イメージは意識化された自己認識のみを指します。自我は無意識の中にも広がり、意識することなくエス達を押さえようとする役割をはたします。

自我は、自分の欲求を満たそうとするエスと違い、現実に適応する合理的方法で自分を満足させようとします。フロイトは 自我とエスとの関係を、馬をエスで、騎手を自我にたとえ、「自我がエスの欲求をコントロールする役割をとっている」と説明しました。

「超自我」は、自我に対して行動の規範を強制し、自我が従わないとき、自我を罰します。その結果、劣等感や罪の意識、不安が発生すると説明しました。超自我は、両親や自分にとって重要な人からの経験から生まれた道徳の番人のような存在です。(この超自我は、キリスト教的道徳感が強く、その存在は脳科学的には否定的です)

 

この三つの中で「自我」が、最も傷つきやすく、精神的病気の原因となります。

その治療法を、フロイトは医師の立場で、「患者の悩みを医師が理解し、それを分かりやすく伝え、患者が、自分の気づかなかったことを受け入れていく」という 手順を取ります。

しかし、患者は、当然、抵抗します。その「抵抗」がなくなるまで、この手順を繰り返すというものです。

手法としては、自由連想法を使って、それをきっかけに、現在自分の抱える症状や問題を話していく中で、症状の原因となっている過去の経験を蘇らせていくことで、抑圧から自我を解放します。

フロイトは、心的な問題の原因を「自我」の「抑圧」だと考えていたようです。(この考え方が現在のPTSAの治療につながっています)

「自我」は、いつもエスと超自我の要求に攻めたてられています。そして、この要求に応えられないと考えると不安が発生します。最も大きな不安は、自我の中で一貫性を無くし、矛盾を起こす「自我の破壊」です。

この不安から自分を守るために「防御規制」が発生します。その自己防御の典型が「攻撃(怒り)」や「抑圧」です。

自我を守る根本的な方法は、「起こったことを自分の中で無かったことにする」ということです。しかし、「無かったことにする」では、自分に嘘をついていることになりますから、「本当に無い状態」いわゆる「記憶から消す」という荒ワザを使うこととなります。これが、「抑圧」です。そして、この抑圧によって自我に一貫性を保持して自分を守るのです。しかし、この保身は一時的には重要で効果的ですが、やがてこれが原因で、心身的あるいは、社会的な不適応な思考や行動を起こすことがあります。これがPTSAです。

脳科学的には、記憶を呼び出さないように思考をプログラムすることが「抑圧」ということになります。

フロイト的には、「自我が抑圧したものを意識から締め出して、無意識に押し込む」という表現が分かりやすいかもしれません。

 

フロイトは、この抑圧や無意識の問題の原因をすべてセックスに結びつけることで様々な人々に道徳的な批判を受けました。また、後世の行動学派から無意識の存在を一時期完全否定されたり、散々なことになりました。

しかし、フロイトは日本の大政奉還のずっと前に生まれ、明治憲法発布のころに有名になった心理学者(哲学者とも言われた)で、現代心理学にも大きな影響を与えた人であることは間違いありません。