こういう組織の難しいところは、人の意識がまだら模様な点です。全体的にはドライな空気が充満しています。中途の入退社が頻繁で、名前も知らない人が多いのです。その中で自分のことを話したり相手のことを聞いたりするといい顔をしない人がいたり、極端なケースでは「公私混同」というクレームを食らったりします。僕は嫌味の混じった「ここは会社ですから」の一撃で傷を負ってから守りに入ったのです。
ところが中に生え抜きや長く勤めている人が混じっていて、日本的なつながりを大切にしている。彼らとビジネスライクに接していると今度は「水谷さんは冷たい」と陰口が回るようになる。サラリーマン時代の最後は、そのような状況で疲れてしまいました。
外資系の前に長く勤務した会社は純日本的、家族的、ムラ社会的な大企業でした。良い意味でのタテ社会も機能していて、ここで若手時代を過ごせたのはキャリア上の幸運でしたが、30代になってからはそのウェットさが重苦しく非効率に感じられ、キャリアアップを目指した時期とも重なって実力主義(と外からは思えた)外資系の文化に憧れたのでした。
公私は分けないのが正解、と今の僕ははっきり答えます。公も私も含めた自分の全てをぶつけなければ、独立事業者は勝負していけない。そんな毎日を送っているうちにサラリーマンだって同じだと気付きました。外資系時代の僕は間違っていた、というより人間力が足りなかった。周囲がどうあろうと自分は自分、人間関係構築路線で突破するべきだっだのです。
仕事上のお金や物品や人的資源を私的に使うのはご法度だし、個人の領域や家族を仕事のために犠牲にするべきではありません。しかし、それ以外ならどんどん公私は交錯するべきではないでしょうか。
ビジネス上の関係者には家族や生い立ち、趣味などを知ってもらえば、共通点を見つけて相手のことを好きになれる確率が高くなります。好きな相手と仕事をしたくなるのは人情です。プライベートな付き合い、例えば地域の人、子どもの学校関係(パパ友、ママ友)、同級生に仕事のことを知ってもらうと違った一面を見せられてこちらも関係が強くなります。
ここで簡単な質問です。いちばん大切なプライベート関係者は誰でしょうか。
それはもちろん家族、特に配偶者です。僕は、夫婦二人三脚で仕事をしている人にとても憧れます。僕も妻を巻き込んで仕事を手伝ってもらえばいいのですが、なかなかできないので、来年は、自分の仕事の状況をもっと開示して理解してもらうところから始めたいと思います。