答えは意外とすぐには出てこず、ちょっと考え込んでしまいました。
「経験だよ」→ 違うな・・・。
「頑張れば見えてくるよ」→ それは答えになってないか・・・。
そんなかみ合わない会話をしている中で、「そういう質問できる先輩とか、近くにいるの?」と聞くとほとんどいないそう。いろいろ自分で悩み考えて、日々の仕事に対しているとのことでした。確かに周りを見回すとそういう若者が多いような気がします。
私が入社したころは、一応基本的なキャリアステップや、まわりに結構わかりやすいロールモデルになる先輩がいたので、あまり将来のことは心配しなくて良かったのですが、最近はキャリア自体が流動化していて、経験を積めば価値観や将来像が見えてくるという時代ではありません。逆にロールモデルになる人がいたとしても、「私にはムリ!」と最初から諦めていたり、「ああはなりたくない!」と逆に反面教師にしてしまったりと、後輩諸氏はなかなか自分のキャリアステップに不安になる一方のようです。
そこで、その不安を解くカギのひとつが、「ココ」つまり「キャリアメンターメットワーク」のような「場」です。単純に他人の経歴や実績といったロールモデルを示すのではなく、その底流にある仕事に対するモチベーションや心構えなどを、先輩たちの「仕事振り」を見て学ぶ、そして自分になかったものに気づくということだと思います。最近流行りつつある「メンタリング」というやつです。よくネットの記事で目にするのは、もともとポテンシャルが相当高いメンティに、カリスマ成功者のメンターという組み合わせで、グローバル人材を育成!!といったものですが、そんなレベルで無くとも、メンタリングは大変効果が高いと思います。
私が社会人になった20年ほど前には、私たちの業界(鉄道工場)や製造業などの現場レベルでは、ブラザー制度という育成の仕組みがありました。新入社員一人に3〜5年先輩が一人ついて二人でひと組となり(期間は半年〜一年)、仕事を教えてくれたり、様々な相談に乗ってもらったりする仕組みです。その時はそれほどありがたみを感じなかったのですが、そばに話がしやすい先輩がいることで、わからないことを聞く恥ずかしさや、人にものを尋ねること、さらに進んで話をすることなどへの抵抗感が薄れて、知らず知らずに職場内でのコミュニケーションスキルが身につきました。
自分にとって幸運だったのは、職場で独り立ちした直後から自分の仕事のコンピタンシーを形作るまでの数年間、職場の先輩や上司にとても恵まれていたことでした。職場の決まりで若手は毎日業務日誌を書くこと(毎日上司に提出)になっているのですが、ただ一日の業務を記載するだけではなく、感想や疑問などを最後に書くようにしたところ、私の上司は毎日必ずそれに対するコメントをくれて、それがまるで交換日記のようになっていました。男同士で気持ち悪いと思う人もいるかもしれませんが、これは今でも貴重な資料で、今もよく読み返しています。自分で日記など書いたことなどなかったのですが、管理職に就くまでの5年間ほどこれを続けました。
相談すること、対話するということは、一般論として良いことは誰でも理解できると思いますが、たぶん今の若い人たちにとって、キャリア形成に必要なのは、仕事そのものを覚えることももちろん大切ですが、様々な仕事に対する際の持つべき考え方や、ビジネスそのものの捉え方、高いモチベーションを持ち続ける人たちのマインドセットや価値観を知り、それを自分の心の鏡に映して、自分なりにいろいろ考えてみるということなのだろうと思います。メンター側の人たちだって連戦連勝の人なんかいません。逆に試行錯誤している人の方が実際多くて、自分が成功者なんて思ってない人がほとんどでしょう(まだまだキャリアの途上なわけですからね!)。でもそんな不完全で自信がなくても、ダテに長く生きているわけではないので、それを伝えていくことで逆に自分もメンティの皆さんからインスパイアされることも多くて、僕らもつい頑張っちゃうのでしょうね。(同時に自分の考えを他人にきちんと伝えることの難しさが、今度は別の壁として高くそびえるわけですが・・・)
実際、このキャリアメンターメットワークを通じて、お話したメンティの人たちも、僕たちメンターから、これまでの自分の中に無かった「何か」、例えば進むべき新しい方向性だったり、足りなかったコトを感じたりして、今までと違う世界に飛び込んで行った人が何人もいます。
皆さんもこのブログを執筆しているメンターたちの生き様を読み取って、「おっ?」と思った人に直接アプローチしてみるのも面白いかもしれませんよ。