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コミュニティと関係構築能力

新しいコミュニティの構築を目指して 2017/03/03(金) 00:00

 前回はサイバーコミュニティの影響が恐ろしいほど強まっていること、そしてそれがコントロール不可能な状況にあることをご紹介しました。今回は、リアルなコミュニティがどのように変質してきたか私の個人的な体験を交えて実感をのべます。

私は東京生まれの東京育ちですが、ご承知のように東京は高度成長期に地方からの大幅な人口流入が続きコミュニティがどんどん変質していきました。実感としてはコミュニティの喪失です。

 

小学校のころは、自宅から学校までの 5分ほどの間の家はだいたいみんな知り合いで、何かいたずらをして逃げても、後姿で〇〇の子だとバレてしまうぐらいお互い良く知っていました。魚や野菜を売る行商の人たちや、富山の薬売りの人、反物を担いで来る人、保険の集金のおじさん、お巡りさんもよく巡回に来ては縁側で話し込んでいましたし、その度に近所の人が集まってきてお茶を飲む人間味あふれるコミュニティがそこにはありました。

しかしアパートが乱立し、知らない人たちがどんどん入ってくるとコミュニティは変質し始めます。さらにアパートがマンションに変る頃になるともう近所づきあいはなくなりました。そして今、私もマンション暮らしておりますが、私自身近所づきあいといえるようなものはほとんどありません。これはある面「楽」ではありますが、楽をすれば能力が退化することは必然です。

現代がおかしいのではなく、昔は近所づきあいが生まれる背景があったのです。電話が各家庭になかったので呼び出しに行きましたし、行商の人が来て近所の人が集まれば効率が良かったのです。もらいものがあれば近所におすそ分けし、お醤油が切れたと隣に借りに行きました。コンビニが至る所にあり、ネットで注文すればその日のうちにアマゾンが届けてくれ、防犯はセコムにたのむ時代とは違います。

劇作家で演出家の平田 オリザ氏は教育に演劇を取り入れる実験的な取り組みをしていますが、簡単な設定でも演技できない子供たちが多いそうです。例えば、たまたま電車に乗り合わせた同士が会話を始めるというような設定で自由に演技させると全く言葉が出ないそうです。なぜならば子供たちは「知らない人とは口をきくな」という教育を受けて育ってきているからです。最近の例ではマンションで「あいさつをしない」という取り決めをしたということがニュースになりましたが、取り決めるのは珍しいにしても、実態としては挨拶をしない人の方が多いかもしれません。

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ところが時代は人材流動化、グローバリゼーション、ダイバシティです。誰とでもすぐつきあえることが従来以上に求められているのです。昔のように正社員だけの長期雇用を前提とした閉鎖的な関係ではなく、年齢・性別・国籍・宗教・思想信条に関わりなく、素早く良好な関係構築ができる能力が一層重要性を増しています。

わが国においては環境変化の中で退化しつつある能力が、ビジネスの世界では今後ますます重要性を増してくるという状況が起こっているのです。体験的にしか習得しにくい関係構築能力の養成のために「新しいコミュニティの構築を目指して」活動していこうと考えています。 これを自然発生的なコミュニティの再構築に期待することは望むべくもありませんので、我々キャリアメンターネットワークが作った環境の中で、健全な良識に基づく強じんな関係構築能力を養成することはできないだろうかと模索中です。もちろん、単にすぐ仲よくなれるというだけではなく、単に交渉に長けているというだけでもありません。それがどのような能力かの定義もこれから明らかにしていきたいと思います。

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。