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第4回 企業内コミュニケーションとリテンションの関係(1) 就活の影響

新しいコミュニティの構築を目指して 2018/03/03(土) 12:25

前回はスマホ世代とそれ以前のコミュニケーションスキルの違いが深刻なゼネレーションギャプに発展していることをご紹介しました。
今回はそのコミュニケーションスキルとリテンションの関係について考察します。

 

 

お知らせ

次回の紹介セミナーは、
若手リテンションをメインテーマに 3月8日(木)14時 から東京駅前で開催します。
嵩原弁護士など、本プロジェクトに関わる専門家たちも多数登壇します。

3月8日(木)開催セミナー
詳細を見る

 

 

第1回でも述べましたが、我々キャリア・メンター・ネットワークはリテンションと言っても、単に若者を辞めさせなければ良いと考えているわけではありません。若者の長期に渡るキャリア形成の重要な出発点において、安易な退転職を防止したいと考えています。

同時に仕事に対するスタンスや心構え、職場や仕事仲間に対する信頼感や責任感も、新入社員のこの時期に形成される部分が非常に大きいと考えています。

私自身もそうでしたが、ほとんどの人は会社を辞めたいと思ったことが一度や二度はあるのではないでしょうか。辞めた方がいいか、我慢した方がいいかは状況によりますが、少なくとも辞めたいと思う度に転職していたら、たぶん重要なスキルは身につかないでしょう。

鉄は熱いうちに打てと言いますが、新入社員としての一年間程度はまさに多くのものが身につくゴールデンタイムなのです。その時期を逸してしまうと 後から身につけるのは難しいスキルやマインドがあります。翌年になれば後輩が入ってくるということも含めて立場も変わってしまうからです。

 

しかし以前のようなやり方は通用しません。メンタリティが変わってきている上に、ストレス耐性が弱く、転職が容易というような条件が重なっていますので、方法を変えていかざるを得ない面はあります。そこに就職が空前の売り手市場という条件が重なってきた影響について考えてみたいと思います。

 

2018年3月1日、たまたまこんな記事を見つけました。


今年の就活生は“超ホワイト志向” 「40歳で年収1000万円」「サビ残はイヤ」
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/180301/mca1803011817012-n1.htm

 

タイトルを見ただけで内容はおおよそ推測できると思いますが、そのなかから一部ご紹介します。

 

「ディスコが毎年行う調査では、就職活動の企業選び(複数回答)において「給与・待遇が良い」ことを軸とする学生は、19.7%(13年卒)から44.2%(19年卒)と大幅アップしている。」

一方採用する企業側は、

 

「採用予定人数の確保よりも、学生の質を優先」という企業も、前年調査より5.3ポイント低下の74.7%と、調査開始の1997年以降で初めて7割台に下がった。」

 

「給与・待遇が良ければなんでもいい」という学生と「質は問わない」という企業が面接で「我が社の志望動機」について質問し答えるわけです。

 

この構造は、売り手市場のときも買い手市場のときも基本的にあまり変らないのですが、その影響は売り手市場か買い手市場によって決定的に違います。

買い手市場のときには、この騙し合いのような面接にも一定の意味がありました。様々な角度から突っ込んで本質を探ろうとする企業と、それに備えて自己分析や面接トレーニングをしっかりやる学生。何はともあれ真剣に深く考え準備することは成長につながります。内定を頂いた時には感激も達成感もあります。

しかし、これが売り手市場になると、もうほとんど茶番劇以外の何物でもありません。極端な場合は学生側に「会社なんてちょろいものだ」「この程度で十分やれる」という慢心しか残りません。

インターネットとスマホの登場以来、コミュニケーションのスキルや流儀がかわり、これがゼネレーションギャップを深刻なものにしているとご紹介しました。その根本的な解決策は「双方が信頼をベースとした深いコミュニケーションをとること」しかありません。

もちろんそれは簡単なことではなく、様々な抜本策を打っていかなければならないのですが、その出発点にあたる出会が就活ですから、それが茶番劇化したということは大きな障害が一つ増えたことを意味します。

コミュニケーションの再構築のためにやらなければならないことは同じですが、出発点がさらに大幅に後退したという状況です。コミュニケーションの前提となる「信頼関係」が双方ともに、今まで以上に結びにくくなったといえるでしょう。

 

 

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。