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明日を支えるイノベーター

新しいコミュニティの構築を目指して 2015/08/29(土) 13:19
※当日の料理。イノベーターは肉食系が多いような気がしますね。 ※当日の料理。イノベーターは肉食系が多いような気がしますね。 明日を支えるイノベーター

本日は3ヵ月に1回巡ってくる第5土曜日ですので、メンターブログ執筆陣以外のゲストとの対話やインタビューをお届けします。今回はたまたま、8月27日に巡り会った若きシリアルアントレプレナーをご紹介します。

8月27日の晩、二人のイノベーターと食事をする機会がありました。
2人は36歳と37歳の働き盛りです。そして分野は違いますが2人とも普通のサラリーマンとはかなり違うキャリアを歩んでおり、かつ2人ともハイパフォーマーです。

一人はサイバーセキュリティの最前線で国際的に活躍するプロフェッショナルのA氏です。これは説明しにくい仕事で、国家防衛に関わるような重要な仕事ですが、医師や弁護士のような国家資格ではなく、芸術家やスポーツ選手のように作品を見せたり記録を競うようなものでもありません。だから彼を紹介するときはいつも困ります。

たとえば、格式の高い某会員制クラブの会員に彼を推薦したときも紹介に困りました。
「どこにお勤めですか?」
先方が聞きたいのは本人ではなくその人が所属する組織や資格なのです。たとえば、上場企業に勤めているとか、経営している会社の業績が堅実であるとか、国家公務員であるとか、本人より所属している組織で判断するのです。ところが彼は公的機関を含む複数の大企業に所属しているもののどこかの社名を名乗るつもりもなく「フリーターです」と自己紹介するようなタイプなので、所属している組織で人物を判断するような人たちには全く理解されません。

そのA氏のセッティングで27日の晩に食事をすることのなった若きシリアルアントレプレナーのB氏も所属組織で語ることのできない人です。初対面でしたのでとりあえず名刺交換したのですが 「代表取締役社長○×△□」 と肩書と名前は書いてあるもののあとは空欄で企業名が見あたりません。よく見ると下の方にデザインのように少し何か字が書いてありますがそれが社名なのかどうかすら分かりません。会社は関係ないと主張しているような名刺です。

話を伺うとB氏は新卒で戦略系コンサルタント会社に入り、26歳で1億5千万円の出資を受けて起業。数々の苦労はあったものの最終的にそれを大企業に売却したそうです。その後、半年ほど世界を見て回り、半年で3つビジネスプランを書き、出資者を見つけ3社とも立ち上げたシリアルアントレプレナーです。そういう意味で現在3社の「代表取締役社長」ではあるものの、「今はセブンと吉牛とマックでバイトしてます」という感覚なのかもしれません。もちろんその難しさもリスクも報酬もバイトとは3桁ぐらい違いますが。

彼らとの話は実に愉快で、少々固くなりつつある私の頭をガツンと叩いてくれました。たとえば3つビジネスプランを書いて3つとも立ち上げてしまうという発想は私にはとても湧きません。詳しくは書けませんがその3つは全く違う市場に向けた全く違うテクノロジーの事業です。私ならアイデアを3つ思いつきビジネスプランを3つ書いたにしても実際に立ち上げる事業は1つに絞ります。
私の場合は3つも同時に事業を立ち上げるほどの能力はありませんから、必然的に絞らざるを得ないわけですが、仮に能力がある人でも実際にやる人は希です。そこまでの動機が無いからです。個人にとってのお金は1つ立ち上げて成功すれば十分ですし、地位肩書や名誉も1社と3社で大きく変わるものではありません。それに対して苦労やリスクは3倍に増えます。プライベートな時間も確実に減ります。

意思決定は常に天秤にかけて行います。天秤の片方にははじめから新規事業のリスクや苦労という相当重いものが乗っているわけです。その反対側に、お金や地位や名誉が乗らないとしたら、一体どんな動機でこの天秤がGO!の側に傾くのか、B氏の話を興味深く伺いました。

「電気自動車になって自動運転になったときにトヨタをはじめ日本の自動車メーカーはどうなりますかね。」
「日本を代表する企業が世界で通用しなくなったら・・・新しいビジネスが沢山必要です。」
「アベノミックスの第三の矢が不発とか言ってるヒマがあったら自分で事業を立ち上げろって思います。」

A氏もB氏も、従来のモノサシではうまく測れません。モノサシが正しいと考える人にとってはA氏もB氏も「測れない」という理由で、わからない→いかがわしい→危険な人物と思われるかもしれませんが、もはや所属している組織でしか自分を語れない人の時代ではありません。

思えば私が、法人と個人の力関係が変わりはじめたと感じたのは1990年代初頭ですが、今はある種の個人が法人の運命を握っているという意味で法人と個人の力関係は逆転しています。そして、法人は短命化し個人の労働期間は長くなり平均寿命も逆転しています。また法人と法人の繋がりが固定的な契約関係でしか無いのに対して、個人と個人の繋がりは信頼をベースにした強靱でかつ柔軟な関係が構築できます。環境変化が激しくなればなるほど、どちらの関係が優位かは明らかです。

明日の日本を主導するのは彼らのような組織を超越したイノベーター達であり、彼らに続く人材を発掘し支援することこそキャリアメンターネットワークの使命だと確信した一夜でした。

 

 

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。