お知らせ
次回の紹介セミナーは、
若手リテンションをメインテーマに 3月8日(木)14時 から東京駅前で開催します。
嵩原弁護士など、本プロジェクトに関わる専門家たちも多数登壇します。
そのセミナーに先立ち当ブログでは、セミナーでご紹介したい内容について、またセミナーでは紹介しきれない背景についてダイジェスト版でご案内いたします。
少々長くなりますので連載形式で、第1回はCMNの考える「若手のリテンション」とは何かについてから、我々の問題意識、そして若者を取り巻く環境について概観し、なぜ「専門家連携による包括的職場診断」が必要なのかご紹介していきたいと思います。
まず今回は「若手のリテンションとは何か」についてキャリアメンターネットワークの見解というか問題意識をご案内します。
第1回「若者のキャリアの観点から若手リテンションを考える」
若手の早期離職を防止しようと言うことについては、人事や経営者の皆様と我々キャリアメンターネットワークは同じ考えですが、何を目的としているか背景にある考え方は若干違うかもしれません。
我々キャリアメンターネットワークは、事業の成功も当然願いますが、若者のキャリアの長期的成功を強く願っています。 したがって我々が目指すゴールは単に若者が辞めなければいいという話ではありません。
ファーストキャリアで身につけるべきものをしっかり身につけるための定着化が目的ですから、どうもリテンションという言葉は適切ではないのですが、セミナーの対象が企業の人事採用に関わる方々がメインですので、ひとことで上手く伝える言葉が見つからず「リテンション」や「定着化」を使っています。
ビジネスの世界に入った最初の1年~2年で何を身につけたかが、その先のキャリアに決定的な影響を与えることは多くの人が経験的にご存知のことだと思います。それが今、危機的状況にあるのではないかというのが我々CMNの見解です。
まず概況から見て昨今の労働市場における若手人材の需給バランスが、相当な売り手市場になっていることはご承知の通りです。そして、若者のキャリアを考える上で、就職時期が売り手市場であることが必ずしもいい環境と言えないことは歴史が示しています。
その典型が「バブル社員」です。バブル世代は、概ね1988年から1992年大卒入社世代で、一般的な評価としては、自立心があまりなく、依存体質であり、仕事ができず、見栄っ張りで、金銭感覚が異常と、あまり高い評価を得ていません。
もちろん個人差が大きいので優秀な人も数多く居ますが、「バブル世代は~」と揶揄される言葉が生まれたということ自体故なきことではありません。
団塊の世代は同世代の人数が多いということに起因するさまざまな社会現象を生涯背負っているわけですし、ゆとり世代は義務教育という最も影響を受けやすい時期の教育方針が変わったわけですから、その前とくらべて違いが出るのは当然です。
それに比べて「バブル世代」は育った社会環境も、人口動態も、教育もその前後と際立った違いがないにもかかわらず、あきらかな違いが生まれたということは、就活を含むファーストキャリア2,3年の影響が極めて大きいことを示しています。
そして今、2017年、18年入社の若者たちのメンタリティが、バブル社員と酷似してきていることが、様々な調査データから浮かび上がってきています。
一例をあげれば公益財団法人 日本生産性本部が諸和44年以来毎年行っている「新入社員 春の意識調査」によれば、「人並みで十分」か「人並み以上に働きたい」かという二者択一の質問に対して「人並みで十分」と答える人が急増しています。そのパターンは1987年ころから1992年ころにかけ急増したパターンと酷似しています。
この背景には「就活」の違いがあります。就活とは学生にとっては初めて真剣に企業と向き合うという意味で「職業原体験」ともいえるインパクトがあります。その経験の質が明らかに変わってきているのです。
これもアンケート調査の結果ですが「就職活動は厳しかった」と答えた学生は2010年卒では77.5%でしたが2017年卒では37.7%に急減しています(キャリタスリサーチ調べ)。
そもそも見知らぬ大人と会話した経験すら無く、なれないスーツ姿で、敬語を使って話すこと自体が苦痛と感じる学生も一定量おります。彼らは就活の内容にかかわらず「厳しい」と感じるはずですから、「厳しかった」と感じた学生が1/3しか居ないということがむしろ異常なのです。
あきらかに企業の採用スタンスがかなり甘くなっていることが伺えますが、これに加えて入社後の扱いもこれまでとは変えているケースが散見されます。
これは統計データとしてはありませんが、CMNが把握している範囲では、「今年から新入社員には1年間残業をさせない」とか、「去年までとは仕事の与え方があきらかに違う」「定期的に人事がヒアリングをしている」等々、特別扱いをはじめたところも少なくありません。
これが恒久的な職場改革なら問題ありませんが、当面入社1年は・・・と言うような目先の対策であれば、バブル期に多くの企業が失敗したやり方とこちらも酷似しています。
若手の採用が売り手市場になる → 企業の採用育成スタンスが甘くなる → 若者の就労感に変化が起こる
バブル期にやったことと同じようなことを一部の企業がやりはじめ、それと呼応するかのように新人のメンタリティがバブル期と酷似し始めたことをわれわれCMNは懸念しています。
おそらくこのような施策は、1年~2年は新入社員の定着率という面では効果があるでしょう。しかし定着率とパフォーマンスは一致しませんし、2~3年目以降の離職率で帳消しになる上に、残った層がさらに悩ましい存在になる可能生を内包しています。
本日は、新人の採用育成がバブル期と酷似してきた点についてご紹介しましたが、バブル期は四半世紀以上も昔の話ですから現代の若者は全く違う部分もあります。明日は、バブル期、また就職が厳しかった頃との対比で何が変わったかをご紹介します。