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第2回 バブル世代とは違う背景事情 ~CMNの若手リテンション考~

新しいコミュニティの構築を目指して 2018/02/22(木) 18:47

昨日は、昨今の採用市場がバブル期と似てきていることをご紹介しましたが、本日はバブル期と現代の若者とは違う環境面について考察します。

 

 

お知らせ

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嵩原弁護士など、本プロジェクトに関わる専門家たちも多数登壇します。

3月8日(木)開催セミナー
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前提として我々は、「人間自体は変わらない」と考えています。食生活などの影響で体格が変化することはあるにしても、わずか1世代や2世代で生物として進化する事はありえないのですから。

社会心理学の父と呼ばれクルト・レヴィンの有名な
B=f(P,E) を拝借しますと
行動B(behavior)は人間P(person)と環境E(environment)できまり、人間Pが変らないならば、行動B(たとえば早期離職)は環境Eの変化で全て説明できるはずです。

もし私が1990年代後半に生まれていたとしたら、今の大学生とまったく変わらないメンタリティを持っていたと思います。つまり、私と彼らの違いは育った環境の違いだけなのです。この考え方でバブル世代と、2017-19入社の世代を取り巻く環境について比較してみます。

 

1.教育について

最近「ゆとり世代」という言葉があまり使われなくなりましたが、2017-19年入社は「ゆとり世代」の影響を最も強く受けた世代です。

「ゆとり世代」を「小中学校において2002年度施行の学習指導要領による教育を受けた世代」とすると、対象になるのは1987年4月2日 - 2004年4月1日の17年間に生まれた日本で教育を受けた世代になります。
ただ、この17年間に生まれた人たちが同じ影響を受けたわけではあません。たとえば1987年生まれは、ゆとり教育が導入されたのが中学3年ですから、ほとんど影響は受けていません。

2017年入社の大卒新入社員が小学校に上がる2002年から学校は完全週5日制になりました。つまり、2017年18年に入社する世代こそ「ゆとりど真ん中世代」なのです(その後の世代は後半徐々に脱ゆとりになります)。

ゆとり世代についても評価は様々ですが、「ゆとり」という言葉が示すとおり「ゆったり」「ゆるい」といった特徴があります。

ゆったりと育ったにしても、人生の中では何度か節目があり、そこでギュッと締めなおすことによって人格形成がなされます。若者にとって大きな節目は受験と就職ですが、その大学受験も変わりました。

バブル世代には35%程度だった大学進学率はゆとり世代になると55%を超えます。バブル当時490校だった大学数が2015年には800校にまで増えました。従って若者の人口は4割減ったにも関わらず大卒者数は逆に増えているのです。

さらにその800校のうち現状250校は定員割れです。大学にとって学生の確保は死活問題ですから、受験生をテストで落とすわけに行かない大学も多いのです。ゆとり世代は、こだわらなければどこかの大学には必ず入れるという面でもまさに「ゆとり」があるのです。

これに対してバブル世代は、受験はその前後の世代とまったく同じでしたから、たとえば1990年の大学合格率は63%でかなり厳しかったのです。

学習の場は学校だけではないので、学力比較は難しいですが大学受験の厳しさという面では、ゆとり世代は(特定の大学に固執しなければ)バブル世代に比べてゆるゆるです。

就活ではともにユルかった「バブル」と「ゆとり」ですが、その前の関門である大学受験についてはかなり違う経験をしています。

 

2.経済環境について

経済面は「バブル」と「ゆとり」では正反対です。たとえば、バブル絶頂期の1989年末に日経平均は3万8915円の史上最高値をつけますが、その年新入社員だった人が生まれた頃の日経平均は1500円程度です。つまり、生まれてから大学を卒業するまでに株価が25倍にも成長する時代に育ったのです。

これに比べて2017年入社の生まれた1995年は1万6千円程度(既に絶頂期の半分以下)でそこから2003年の8千円割れまで、つまり生まれてから8歳までに株価は半分以下になります。そこから1万8千円まで上昇しますがそこでリーマンショックが起こりまた8千円を割り込みます。

そして「バブル世代」は高度成長期に組織を駆け上がる両親を見て育ち、「ゆとり世代」は給料が上がらずリストラにあえぐ両親を見て育ったともいえます。この環境の違いが金銭感覚や就労観に大きく影響するのは当然で、若者の安定志向はある意味当たり前です。

 

3.転職環境について

新卒入社して早期離職をした人を「第二新卒」と呼びますが、この言葉はバブル期に生まれました。当時は内定辞退の穴が埋まらない企業の足元を見て、一方新入社員には「職場に合わないと思ったら就職しなおせますよ」という甘いメッセージでさそうえげつないやり口に見えて苦々しく思ったことを覚えています。

採用までの長いプロセスで企業側が費やした労力も考えれば、入社1年も経たずに辞めてしまう社員を高く評価することはできず、当時は補充要員としてやむを得ず採るという位置づけだったと思います。

とはいえ大卒新入社員の3割が3年以内に辞めていますので、第二新卒マーケットはゆうに10万人を超えており、確実に市民権を得た感があります。

若手にとってもスマホで簡単にアクセスでき、転職市場における自分の価値を判断したり、転職の具体的サポートを無料で受けたりできますので、ある意味で就活以上にいたれりつくせりとも言えます。

それが昨今の有効求人倍率の上昇を受けて過熱気味になってきました。象徴的な広告をあげておきます。

バブル世代とは違う背景事情

エンジャパンの成長の原動力ともなった名コピー「転職は慎重に」は、転職という人生の重大な転機に関わる者としての矜持が感じられ好感を持ちましたが、最近は様変わりしています。

 

バブル世代とは違う背景事情

キャリアの問題は自己責任とはいえ、こういう広告を見ると個人的には暗澹たる気持ちになります。

教育がゆるく、受験がゆるく、就活がゆるく、加えて転職もこうなってくると、「バブル世代」どころではないメンタリティに育っても不思議ではありません。

彼らの問題ではなく、我々がそのような環境を彼らに与えたのですから。

そして、更にこれより大きな環境の違いとしてインターネット~スマホがあります。

この点については明日。

 

 

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。