なぜこの時期に出したかというと、今年は就職が売手市場で複数内定を持っている学生も多いので、内定式前に業界・企業を選ぶ上での考え方を伝えようと思ったわけですが、もう一つは、個別アドバイスの時間を減らしたいという事情もありました。
夜10時過ぎからtwitterで投稿することが多いのですが、投稿中に質問が入ってくるとそれに答えながら、夜中の2時、3時、と睡眠を削るしかありません。二人、三人と同時に相談の乗る場合もあります。
それらの相談の内容は似ているものも多いので、「まずはこれを読んで下さい」で少し時間を圧縮できればというのが出版の大きな動機です。
手抜きと思われるかもしれませんが(それは否定しませんが)、実はキャリア・メンター・ネットワークは、今、大きく舵を切りつつあります。
本会は6年前に、大学を卒業したけど就職できなかった若者たちが、一生正社員になれないのは社会的損失だと考え、ボランティアではじめたキャリア支援から出発しています。当時はリーマンショック後の就職が冷え込んだ時期でしたので、大卒無業はかなり深刻な社会問題でした。
しかし今は、やや過熱気味とも言える売手市場で、贅沢を言わなければどこにも入れないということはほとんどなくなってきました。実際の相談内容も、かなり余裕のある(贅沢な)ものが増えているのです。
当会としては「正社員としての入社」は支援しますが、就職人気企業への入社を支援するつもりはありませんので、一応、当初の目的は達成できたと考えております。
もちろん、既卒者で、能力も就業意欲はありながら正社員になれないと悩んでいる人がいれば個別相談、支援はこれから続けますので、いつでも声をかけてください。
一方、若手人材に新たな問題が顕在化してきました。入社はできても、すぐに辞めてしまう若者が多く、逆に辞めずに頑張ったために潰されてしまう(精神疾患や過労死自殺)というような悲惨なケースも増えてきました。
実際に当会でも、メンティが休職に追い込まれ、復職まで1年もかかった例もあります。今は元気にやっていますが、原因は退職者不補充で半年以上も二人分の仕事をさせた上に、途中上司が異動し、支えも失うなど悪条件が重なったためです。
私自身、彼が追い込まれて行くプロセスで、何度か相談も受けていますので、休職にまで至ったことには忸怩たる思いがあります。「人事にこういう申し入れをしてみては」というようなアドバイスをしても、ほとんど会社には受け入れてもらえませんでした。
休職の診断が出た時はもっと早く労基などの相談窓口につなぐべきだったかとも思いましたが、彼のタイプとキャリアを考えた場合、判断は難しいところです。
このようなケースは決して珍しくありません。もちろんそれは企業側にとっても悩ましい問題で、現実に莫大な金額の損失が生まれています。
たとえば、今回のような休職にまで至る健康損失は平均して本人の年俸1年分の損失が生まれると言われておりますし、休職にまでは至らない能率低下やミスなどによる経済的損失は、さらにその4倍も大きい(休職よりはるかに多いので)というWHOの調査もあります。
もちろん退職すればその穴埋めにコストがかかりますし(ターンオーバーコスト)、大量に辞めればその評判で採用そのものが困難になり、そのまま採用コストに跳ね返ります。
これは、全く馬鹿馬鹿しい話で、若者と会社の利害が対立しているわけではなく同じ方向を向いているにもかかわらず、企業と若者が微妙にベクトルが合わないために、双方に莫大な損失が生まれているのです。
潰されそうになる若者も厳しいですが、潰れたり辞められてしまう企業も厳しい局面に立たされています。むしろこちらのミスマッチの方が社会的に深刻ではないか、という問題意識から昨年来検討を重ね、若者を受入れる側の企業向けの支援策を検討中です。
将来を担う若者のキャリアをサポートするという当会の使命は変わりませんが、その方法は社会情勢に照らして、若者の後押しから、引き上げ・育成へと大きく転換します。
その内容は大変長い話になりますので、当ブログでは書ききれません。詳しくは、1週間以内に、また本にして出版(kindle版)しますので、ぜひご一読ください。