なんだろう?裁判所って書いてある。
ふと周りを見ると、冷蔵庫、掃除機、洗濯機、TV、ダイニングセットのあちらこちらに、ペタペタと。
って!!!
我が家に裁判所が来て、動産を差押えされている。 Σ('◉⌓◉’)
えー!?と思って主人に電話したら「Alex ゴメンネ」ときたもんだ。
「大丈夫。僕の家財だけ差し押さえられたんだけど、家財は全部Alexのものだし、僕が買ったものはないし、レシート提出して証明すれば大丈夫だから。」
あ、そうなの。じゃあいいけど。
クリスマス直前のシンガポールで、我が家には、とんだサンタがやって来たもんだ・・・しぶしぶ過去のファイルを出して、レシートを探す。
そもそも、コトのあらましは、こういうこと。
主人が個人事業主として運営していた仕事で、レンタル料の支払いが滞り、ギブアップ。ところがレンタル会社から、早期解約の違約金も含めて数百万の法外な請求が弁護士事務所を通して届いたのが約1年前。すぐに、レンタル会社の社長と直接対話を申し出たものの「弁護士を通してくれ」の一点張り。以降、主人は弁護士を雇うお金もなく、低所得者層の無料弁護士に依頼するほど一家の収入も低くないため、動けない。何もできない主人に業を煮やした相手は裁判所に提訴し、それでも反応がないので今回動産の差押えにやって来た…という流れ。対象は主人ひとりで、法的には私に直接関係がない。
過去、自分の仕事で訴訟案件に何度か携わりましたが、日常の些細な(百万円単位の)案件は、結局弁護士だけが儲かる仕組みにだと学びました。相手に善意があれば、お互い直接話し合ったほうが、うまくまとまる。その経験から鑑みるに、今回のレンタル会社も、当初こちらの話合い申入れを受け入れたほうが、結局は丸く収まったのでは?・・・と、感じる次第。その証拠に、長い時を経て、結局レンタル会社から「話し合いで妥結したい」と電話が何度もかかってきたらしい。でも、時すでに遅く、長く苦しんだ主人は申入れを拒否。そこで先方が、また弁護士にお金を払って、動産の差押えに至った模様。
状況は把握していましたが、主人のことだし、もう私にできることないし。
「悪いけど、私は家族を支える私の役割を果たすから、自分の問題は自分で対応して。贅沢はできないけど生活はしていけるから。」と腹をくくったのが去年。
そんなわけで、「忙しいのに・・・」とブツブツ言いながら夜にレシートを探す私。
差し押さえのシールを張られ、レシートが手元にないものは、友達にもらった家具、ビンゴで貰ったもう音が出ないiPad2、接触が悪くて炊飯中に電源が切れる炊飯器。画面が乱れて二重に移る薄型テレビ、吸込みが悪い掃除機・・・・・・むしろ、処分が必要だったものばかり。強がりじゃなくて、本当に裁判所に気の毒ないくらい、うちって価値ある家財がないな~、ひどい生活ぶりだな~・・・と反省する。
法的に、徹底的に追い詰められるなら、今後彼らは主人を破産させるでしょう。その手続も原告に更なるお金がかかる。お金を費やすだけで「腹いせ」以外に、得るもがない。相手はお金が欲しいだけで、個人的に恨みつくしているわけでないから、動産の差押で、案件は幕を降ろす可能性が極めて高い。
差押の夜、子供を寝かせてから、主人と久しぶりにこの件で話をしました。
「このアクションで、このケースは 'The End'。やっと終わりが見えて、それが一番よかった。安心したよ」とほっとする私を見て、主人は目がテン。
何年も前から私はこの件で困り果てて、身銭も切って、何度も泣いて、どれだけ未来を憂いたかわからない。私への請求じゃなかったけれど、できることはやり尽くし、そうは見えないだろうけど生活は困窮。でも、そんな生活もやっと終わる。物なんて全部持っていってくれて構わない。私、鍋1個あればゴハンも炊けるし、テレビなんて見てなかったし、生活にはなんにも困らない。この「出口が見えた感」、解放感、心の自由はこの上ない。
今回の件、主人のビジネスがうまくいかず、レンタル代を払えなかっただけで、変なところから借金したわけじゃないのが「でかした!」ポイント。レンタル会社も、法的に正しい手続きを取っているだけなので、私や子供に直接被害が及ばない。それは不幸中の幸いで、本当に助かった。
「今、ご主人に対して、なんと伝えたいですか?」とインタビューされたら、
「あなたって本当にバカだけど、そこまで馬鹿じゃなかった―!!バンザーイ!!」と海辺で朝日に向かって、愛と喜びを叫びたい。
そんなわけで、私の人生の目的は、高齢出産した以降は「長生き」だけでしたが、今回の経験を経て、「どんなに貧乏しても、借金だけは絶対にしない」も加わった。
そういえば、今回の差押えのこぼれ話をひとつ。
裁判所と原告がきてプロの鍵屋が、門の鍵を開けたところに、バッタリ主人が帰宅したらしい。帰る前に、いつもの鍵が使えるかを気にかけてくれて、鍵穴に油を注してくれたらしい。今まで開けにくかった鍵が、ものすごくスムーズに回るようになったので「予想外のサービスで、ラッキーだったね」と、吹っ切れたように笑ってしまう。
とんだことになったけど、恥ずかしいと思うほどゆとりもないし、絶望するほど暇でもない。夫婦ケンカするほど些細なことでもない。私は家族に今日のごはんを食べさせなきゃいけないし、子供の保育所代だって払わなくっちゃ。さあ、働け働け。
そんな私たちの2017年に幸あれ!
それでは皆様、また来月お目にかかりましょう。