保育所。
朝、バタバタと子供を預けて仕事に向かい、仕事が終わると閉園時間に追われ時計とにらめっこで一目散に駆け込む場所。Alexが預けている所は、0歳から6歳までの子供が集まり、お世話になっている約2年間は、日本人は私だけ。子供の構成は、西洋人が半分、アジア人が半分。
はじめのうちは保護者も園児も先生も、誰が誰だかわからないので、ニコニコ「おはようございます」「さよなら」と言うだけで精一杯。ところが、毎日同じことを繰り返すうちに、数か月経つと、だいたい同じ時間に、同じ保護者にお目にかかるので、顔見知りになってきました。西洋人は全員が英語をべらべら喋りそうで、若干気おくれしていましたが、ところがどっこい。ベルギー、スペイン、ドイツ、メキシコ、スロベニア、スウェーデン・ポーランド・・・・例えば金髪で青い目でも、英語を母国語としない人もたくさんいらっしゃるので、自分の英語力のなさは、気にならなくなりました。
毎日すれ違ううちに、「あのお父さんはいつもカジュアルな格好をしているけど、働かなくていいのかな?」とか、「朝8時に子供を送りに来て、夕方も早く子供を迎えに来ているけれど、労働時間ずいぶん短い?よっぽど偉い人なのかな?」とか、「あのお母さんは、機嫌がいい時は挨拶するけど、気が向かない時は無視する人なんだな」とか、「あのお母さんは、友達が多い人だな」なんて感じるように。毎日の一瞬を積み重ねて、少しずつ相手の情報を蓄積し、自分に合いそうな人がわかってきました。
そのうち保護者とも先生とも、スーパーで偶然会ったり、保育所のイベントに参加して、「おはよう、さよなら」以外の話題も出るようになりました。「子供、もう立つようになったのね」とか「カワイイお洋服を着ているね」「最近見なかったけど、仕事忙しいの?」とか。やはりたわいもない雑談です。次第に、私が保育所からの帰り道に無料のシャトルバスを待っていると「大通りまで送るから、乗っていきなよ」と声をかけていただいたり、旦那同士が顔見知りになって、週末に会ったり、お互いの理解が深まり、それぞれのできることがわかってくると、「あ、じゃあ!」と無理のない範囲でお仕事を頂く関係になったり。
また、親しくなった先生がポロリ「あの子のお父さんはOKだけど、お母さんはちょっと難しそうだから、ほんの少し気を付けないとね」なんてウィンクしながら漏らされると、先生が自分には気を許してくださっているんだと感じます。先生と気持ちが近くなると、子供について聞きたいことをオープンにお伺いできるので、子供の成長について一人で心配をすることもなく、ストレスと無縁に(笑)。先生の結婚式に招かれて、そこでまた他の先生や保護者と親しくなったり。そうして時間をかけて少しずつ広がっていくネットワークはそれだけで宝物。親しい人の中で、自然に振る舞えるようになり、それがいつか、何かに化けていくこともあります。
例えば、昨日今日と大忙しだった私は、なぜかアフリカ、アラブ、ヨーロッパ、北米、アジアをまたがるエネルギー開発や宝石の鉱山、航空機売買などにかかわる投資家の宴席の通訳を任ぜられました。(タダ飯につられて、ボランティアでした)。親しい方から頼まれたので、気楽にお伺いしたのですが、その投資家のお一人が、他の投資家との関係性や仕事ぶり、宴席での立ち回りを気に入ってくださり、新たなヘッドハンティングになりそう。すでに仕事のオファーをしてくださるニオイがプンプンしています。
普段は500円のドリンクを売っている地味な私が、100億円単位の話をする人たちの飲み会で淡々と役割を果たしていることですが、夢のような一瞬でしたが、この出会いが、私の人生の方向を変えていくか否か? To Be Continued.
慎重に見極めは必要・・・・と言う人もいらっしゃいいますが、シンガポールのキャリアで失敗し続けている私。もはや失う物もないので、「うまくいかなかったら、また別なことすればいいや」と気楽に考えて、(犯罪と宗教でなければ)大きな風が吹いたら乗ってみるつもりです。その投資家を囲む人たちも、自分と合いそうな印象を持ちました。
シンガポールという土地柄、この8年間、自分の努力でのし上がる方々もたくさん見ましたが、幸運に恵まれてチャンスをつかむ人もたくさん見ました。平凡な私は、努力は当たり前ですが、プラスアルファで運と縁をもっと積極的に掴まないと、失った8年を取り戻せない(笑)・・・・というわけで、人生計画もキャリアプランもないけれど、エネルギーだけはあるAlexは、自分ができることを活かしてチャンスの兆しにワクワクしております。彼らにとっては、Alexの給与なんて、爪の垢ほどのバリューもない小さなお金ですしね(^^;。
大まかにまとめます。
海外で暮らそうと、日本で暮らそうと、会社生活でも社会生活でも、自分の居場所づくりはとても大切。自分で「居場所がある」と感じられれば、リラックスして、自信をもって、良いパフォーマンスを上げられます。いい仕事ができれば、ふと風が吹いて、チャンスがやってくることもある、という例でした。私のキャリアチェンジにつながるかもしれない出会いは、保育所で毎日会う人に「おはようございます」「さよなら」と、あいさつをしていたことから始まった・・・・と伝えたい、回りくどいストーリー。
毎日の小さな習慣は、きっと何かの始まり。
というわけで、現在進行形の小さなチャンスを匂わせつつ、今月は筆をおくことといたします。
来月は、フロンティア精神でアメリカに渡ったアジアの移民と、親のオリジナルの地に戻ってくる子供たち、という2世代にわたるお話をご紹介いたします。