キャリア メンター ネットワークは、将来性ある若者のキャリア形成をサポートします

ブログ

キャリア形成をさまざまな視点で見つめます

CMNニュース 出発点

新しいコミュニティの構築を目指して 2015/08/05(水) 00:41

初回ですから、まずCMNニュースの位置づけについてご案内します。

タイトルはCMNニュースとCNNに似てますが残念ながら掲載は毎月1回のみです。従って鮮度で勝負するニュースではなく現代のキャリアの潮流について展望するフィーチャー記事を目指します。また年間12回の内、半分はキャリアメンターネットワークの活動報告にあてます。こちらはなるべく取材記事の雰囲気でお届けしたいと思います。なお、文体もニュース風に常体(だ・である調)でお届けします。

それでは第一回はキャリアメンターネットワークの出発点となった記事からご紹介します。

CMNニュース1「大卒の就職率ってどうなっているのだろう」

「大学生の就職率ってどれぐらいか知ってますか?」今から4年前の2011年、こう質問されて私は「90%ぐらいですかね」と答えた。そういうニュースを見た記憶があったからだ。当時私が見たニュースのもととなったソースはこれだ.

この厚生労働省・文部科学省共同調査が新聞、テレビで報道される「大学生の就職率」のもととなるデータで世間一般で就職率と言えばこれだと思われているものである。

私もほんの少しだけ大学で教えているので就職率には関心があり、特に当時はリーマンショック後の落ち込みの厳しい時期でもあったので新卒採用に詳しいA氏に伺ったところ冒頭の質問をされたのだ。

「あれはあくまで上位大学の就職率なんですよ。」

そう聞いて調査方法を確認してみると、確かに上記のデータは大学全部ではなく、その中から60校を抽出したデータだった。それもその60校はランダムに選ばれたわけではなく、明らかに意図を持って選ばれた学校だということが国公立と私大の構成比からも読み取れる。

平均的に見れば国立大学の方が私学より就職率は高い。そして、どうやら私学も早慶上智といった就職上位校が選ばれているらしい(非公開)。

「Fランの新設学部なら就職率は80%がいいところですよ」とA氏は続けた。

Fランとは入学時の偏差値がFランク(ABCDEに入らないランク外)の大学という意味の蔑称で、特に明確な基準があるわけではないようだがいわば三流大学という意味だ。私の教えている千葉商科大学もそれに含まれるらしく、「サービス創造学部」という新設学部の第一期生なら80%も就職できればいい方だろうというA氏のお見立てだった。

幸いにして千葉商科大学のサービス創造学部は、熱血吉田学部長はじめ教職員の努力が実り、第一期生から就職率99%超を2年続け3年目はついに100%達成と順調に推移しているが、当時は危機感を募らせた。就職率80%ならば1学年200名として40名が就職できないことになる。卒業3年目までは新卒と同様に扱うという政府方針は出ているものの、それが有名無実であることはご存じの通りだ。生涯フリーターという可能性は低くないのだ。そうなった場合の責任は極めて重い。

しかし、大卒の就職率は一体何%程度なのだろうか。また、就職できなかった人のその後の仕事や生活はどうなっているのだろうか。もっと詳しいデータが知りたいと思った頃、ちょうど文科省が「学校基本調査」で始めてその実態を明らかにした。

平成24年度学校基本調査(速報値)の公表について(平成24年8月27日文部科学省)

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/houdou/__icsFiles/afieldfile/2012/08/30/1324976_01.pdf

「学校基本調査」自体は1948年から行われているが、この年はじめて「就職者」の内訳を「正社員」と「正規の職員等でないもの」に分けて公表した。下図がそこに収録された内訳図だ。

正社員を希望しない人も希にはいるが、ほとんどの人は大卒後就職するなら正社員を望むのだから、「正規の職員等でないもの」とは就職に失敗してやむを得ず非正規で働いている人と考えられる。

進学も就職もしていない者8万6千638人、一次的な仕事に就いた者、1万9千596人、正規の職員等でない者2万1千990人、これらを「安定的な雇用に就いていない者」として括ると12万8千224人、実に大学卒業者の23%が正社員として就職できていないいわゆる就活失敗者なのだ。

これと同じ調査を平成26年度版で見ると「安定的な雇用に就いていない者」の総数は10万5千275人と、景気回復と共に18.6%まで改善されているが、それでもまだ約2割が正社員として就職できていない。

なおかつ、753(シチゴサン)と言われる3年以内離職率問題がある。平均して、中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が入社3年以内に退職しているのだ。その中には転職に成功した者もいるかもしれないが、その多くは仕事をしていなかったり、アルバイトや派遣になってしまう。これに加えて大学中退や就職留年、留学したが帰国後職がなかったり、公務員試験に受からなかった者など入れると、実に若者の5割はキャリアの初期的段階で躓いていることになる。

どうやら就職率が例年90%を超えているという厚労省・文科省共同調査「大学等卒業者の就職状況調査」とは全く違った実態があるようなのだ。

そして、正社員の賃金と非正規の賃金にはご承知の通り大きな差がある。年収格差だけでなく、雇用の安定性の問題もあり、正社員と非正規では婚姻率にも明らかな差が出ている。

一方、企業の側を見れば、若者が来てくれないと嘆く中小企業や不人気業種は少なくない。現実に店舗閉鎖に追い込まれている大手外食産業や、事業の存続が危ぶまれる中小企業も少なくないのだ。これらの現象は、日本社会が長期にわたる少子化に突入しているのだから当然起こり得ることだが、それと大卒の2割が就職に失敗し、若者の5割がキャリアの初期段階で躓くという問題が同時に発生していることに素朴な疑問を感じる。

何かがおかしい。そして現実に厖大なロスが起きている。大卒無業は本人にとって不幸なことであるのはもちろん、国家的な損失を生み続けている。

この思いがキャリアメンターネットワークの出発点となったという意味で、第1回のCMNニュースで取り上げた。次回は活動レポートを挟んで若年層のキャリア問題の実態をさらに概観してみたい。

 

 

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。