この組織は私が周囲を巻き込んで立ち上げたと思っている方もいるでしょうし、そう思われることを否定はしませんが、私自信も大きな渦に巻き込まれた結果この組織が生まれたと感じています。今回はその直接的な切っ掛けとなった3年前のある晩の出来事からお話しします。
2011年10月26日、恵比寿にある中華料理店の地下で、大卒無業の若者達と不思議なお祝いをしました。不安げなまなざしでなんともぎこちないスタートでした。
その年の春、私は「就職率悪化の対策として政府が急遽打ち出した大卒インターンシップ制度の受け入れ先企業を紹介してもらえませんか」と頼まれました。引受先が足りなくて困っているということでした。聞けば悪い話しではないので懇意にして頂いている経営者のみなさんにご紹介しましたところ、結果的に数社お引き受けいただきましたが、4月の入社式も過ぎていましたので彼らだけ集めて合同新入社員研修をして送り出しました。
それから半年後、インターンシップ終了と同時にまた企業から出されてしまった若者達も少なくありません。恵比寿に集まった彼らはそのインターンシップ卒業組でした。
インターンシップが終わって、また無職になったことを私に報告してくれたのです。「ビジネスでは報連相が大切って研修で教えたなあ」と思いつつ、彼らになんと言ったらいいのか言葉が浮かびませんでした。
「一応卒業だから新しい門出をお祝いしよう。場所決めたら連絡するから」と、その場を取り繕ってから考えました。ただ集まって飲み食いしたって先のない話しですので、何かの切っ掛けになる様なことはできないだろうかと考え、彼らにとって少し先輩に当たる私の年若い友人達に応援を頼みました。彼らと年齢が近いだけでなく、人生を切り拓く気概を持った連中ですので、触れるだけで刺激になると淡い期待もありました。「まあ変なお祝いだけどとりあえずつきあってくれ」と声を掛けたのです。
元気のないスタートでしたが、たまたま、アニメやゲームの話しで接点が見つかったらしく途中から話しが盛り上がり、最後にはその中の一人のミリオタ(※1)クンに「お前は自衛隊に行け」と、まことに無責任なアドバイスまで飛び出しました。
「体重が100㎏近く脂肪肝で調子が悪いという子にミリオタというだけで自衛隊勧めてどうするんだ」と私は懐疑的でしたが、「あいつただのミリオタじゃないですよ」と、私よりはるかに彼の本質を掴んでいるような口ぶりでどんどん話を進め、本人もその気になったようです。しかしまあ飲み会の話しですし、数日で消えてなくなるだろうと踏んでいました。
ところが立ち消えどころかしっかりフォローして現役自衛官まで連れて来てアドバイスをし、本人も勉強とトレーニングを続け80㎏まで体重を絞りました。外見も別人かと思うほどの変貌ぶりで、見事曹候補生試験に受かり海上自衛隊に入隊して現在活躍中です。
その集まりから正社員として就職した者もいて、クランボルツ博士ではありませんがキャリアが偶然によって大きく変わる実例を目の当たりにしました。そして主役はキャリアコンサルタントでも転職会社でも就活塾でもなく、敢えて名付けるならばメンター達だったのです。この組織の萌芽はそこから生まれました。
次回はインターンシップ合格組のご紹介をします。
※1)ミリオタ:「ミリタリーオタク」の略。戦闘機や軍艦といった軍隊の装備品、軍服、国防などに強い関心を持ち、愛好してやまない人。