CMNのトレーニングはWebを主体とした反転学習ですので、スクーリングは一ヵ月間の成果を確認し、積み残しを解消して、これからの進め方についてディスカッションして決める事が主な目的です。中でも自分たちで学ぶことを自分たちで決めるというのが重要なところで、主体性を持ちつつも立場や目指す方向の違う人達が相談しながら折り合いをつけて行くプロセス自体が啓発になり学習になります。
もう少しご紹介をしたいところですが、CMNニュースでは前回、前々回とトレーニングコースのご紹介をしていますし、スクーリングは一ヵ月に一回あり、私が担当するこのCMNニュースも1ヵ月に1回ですから、このままだと毎回スクーリングのご報告になってしまいますので、今回はここまでとして記念写真を貼っておきます。
■若者のマインドと環境の関係
さて、今回のテーマですが、ニューズウィーク日本語版で拝見した舞田敏彦氏(武蔵野大学講師)の「世界一「チャレンジしない」日本の20代」という記事から若者の保守的気質と環境の関係について論じます。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/12/20-7_1.php
これは2010~14年に各国の研究者が実施した『世界価値観調査』のデータから、「新しいアイディアを思いつき、クリエーティブであることを大切にしている」と「冒険してリスクを冒すこと、刺激のある生活を大切にしている」という2項目について、世界59カ国の若者がどのような状況にあるかを比較したレポートです。
ぜひ一度、読んでいただきたいのですがお時間のない方は上記Webサイトを開いて2ページ目のまん中に掲示してあるグラフだけでも見てください。
グラフは縦軸に「冒険や刺激のある生活は大切だ」、横軸に「クリエーティブであることは大切だ」を置いたマトリックス上に各国の若者をプロットしたものですが、世界59カ国の中でも日本は両項目共に最下位で、それも突出したところにポツンとあるのです。もう、異次元の国という感じです。
私自身、若者のリスク回避傾向や指示待ち傾向はかなり以前から薄々感じてはいましたが、実体験として衝撃を受けたのは今から7年前に、はじめて大学で受業をしたときの事です。大学1年生に対する受業で「自分の夢を1分間で語る」という課題を与えてひとり一人前に出てスピーチさせたのです。
最初の学生は「夢は今探しているところです」という趣旨のスピーチをしました。これはまだ大学に入ったばかりの一年生ですから想定の範囲でしたが、3人目に発表した学生が「老後に温泉旅行に行きたい」と言ったのです。私はそのときてっきりジョークをかましたのだと思い、一年生にしてはいい度胸だと感心しました。まさか大学1年生の夢が「老後に温泉旅行」のわけはないと思い込んでいたからです。ところがまた数名後に「老後」が出てきたのです。今度は「老後に孫と家庭菜園をしたい」というのです。その学生の態度を見ているととても緊張しておりジョークが言えるようなタイプではないのです。さらに驚いたことに、その「老後」という発表を聞いても、他の学生の反応は驚くことも笑うこともなく、当然のようにしているのです。
約50人の学生に発表させたところ「老後」に近い発表が4名いましたので、全員の発表が終わってから、「なんで大学1年なのに夢が老後なの?」と聞いたところ、「この先の人生に楽しいことなんかない」と非常に悲観的に見ているのです。「働けなければならないけれど就職できるかどうかもわからないし」「就職できなければ一生アルバイトだし」「就職できたにしてもそれって40年間の奴隷契約でしょ」、次々と出てくる悲観的な言葉に衝撃を受け背筋が寒くなりました。
彼らは決して斜に構えているわけでも抵抗しているわけでもなく、自分の目に映っているオトナとか家庭とか社会に対する感想を率直に述べているのです。それも、彼らは大学に進学できたわけですから、それほど悲惨な家庭環境とも思えませんので、ごく普通に人生を悲観している学生が居ると言うことが分かりました。
一つの原因は日本の経済状況です。彼らが生まれたのは平成元年~2年です。つまりバブルが崩壊した時に生まれ失われた20年間に育ってきたのです。生まれる直前は3万9千あった日経平均株価が、10年後には半分になり、さらにその半分になるになる中で成長してきたわけです。
ちなみに私が就職した1980年の日経平均は6800円でした。それから約10年後の1989年暮れの大納会で38915円をつけましたので10年で約6倍になったわけです。時代背景による影響があるのは間違いありません。
また、「老後」という言葉が出るのは実体験からだと思います。両親はまだ忙しそうに働き苦労も多いようだが、おじいちゃんおばあちゃんは幸せそうだと、たぶん彼らにはそう見えたのでしょう。
しかし、このまま少子高齢化・人口減少に直面しているわが国の若者が、リスクを嫌いクリエイティビティを発揮しないならば、財産を食いつぶすだけで早晩国家が没落していくでしょう。
例えば非上場にもかかわらず、企業価値が10億ドル(約1200億円)を突破する有望ベンチャーがどの程度あるか世界の状況を見ると日本はトップの米国や二位の中国と比べると金額で2桁劣るという惨憺たる状況です。
出典:日本経済新聞 http://vdata.nikkei.com/prj2/ni2015
彼らが育った時期の経済環境や家庭環境は変えられませんから、われわれにできることは、彼らの能力開発でありマインドセットであり、動機づけであり、サポートです。チャレンジ精神を持った若者が輩出する社会にできるかどうか、若者ではなくわれわれが責任を問われているのではないでしょうか。(次回に続く)