しかしながら人材紹介や人事を経験しますと「キャリアは意識して作るもの」ではなく「意識して日々過ごすことによって生み出される過去の繋がり(=履歴・経歴)」であると感じることが多くあります。
ちなみに「Career」という英単語から考えると、レールのように道が敷かれているところに重いものを引きずって轍(わだち)を残し、先々に少し明るい見通しが立つようなイメージが浮かびます。
さて、これからキャリアを築いていかなければならない方々は、キャリアをどのように考えていくことが重要になるのか、または「そもそもキャリアを考えない方が良いのではないか」を考えてみたいと思います。
まずは「キャリアとは振り返った時に見えてくるモノ」であることを前提として考えると、「これから就く仕事によって築かれるモノ」を示す言葉を使いたくなりますので、仮に「仕事人生」という言葉を使ってみたいと思います。
1.仕事人生を考える
「仕事だけが人生ではない」とか「仕事だけが全てではない」という言葉を目にする、耳にすることがあるかと思いますが、それ以外の日々の時間の使い方にはどのようなものがあるのでしょうか。
「食事人生」「睡眠人生」「ゲーム人生」「趣味人生」「野球人生」「サッカー人生」…と、いろいろあるかもしれません。
逆に、そこまで人生とか考えずに過ごす時間もあると思います。
日本では仕事時間は、1日8時間と労働基準法に定められていますので、その1日の1/3にどれだけの労力と意識を向けられるのか、そこまで難しいことなのかは考えてみても良いかもしれません。
また、1日の半分も、自分の気持ちの半分も仕事をするために使うべきなのか?ということも気に掛けることも大切です。
2.仕事人生で大切なこととは
仕事上のキャリア(過去に何か働いた経験)を一旦考えずに、自分自身の働き方、生き方を考えていくことを「仕事人生」という言葉で考えますと、キャリアが無くともこれまでの人生経験や学業や人間関係すべてが「働く上での資産、原材料」と考えることができます。
それら自分が持つ「資産」をどのように活かしていくのかを考えてみたことがあるかどうかは重要なポイントになります。
ワークライフバランスという言葉が一部で流行していますが、バランスという言葉だから 50%/50% である必要はありません。仕事90%、その他の時間10%でも構わないのです。1か月は続かないかもしれませんが。
加えて、市場価値という手の届かない妄想も、働く上での基準として頭を悩ますことがありますが、これは人材紹介ビジネスをやっている会社でもよくわかっていません。
採用を希望する企業が多い場合だけ市場価値が高くなるわけですが、一時期は「文系SE」や「SAP認定コンサルタント」、「ISO27001審査員補資格保有者」の市場価値がとても高かったこともありました・・・。数年間の最大瞬間風速的な現象として、今では多くの人達が忘れてしまった記憶です。
3.仕事人生を充実させるために必要なもの
良い会社に入ることは、きっかけとしてはとても重要なことに変わりありません。
発展の可能性がある環境に身を置くことで、自分自身が引き上げられる可能性があるのは事実です。周囲からの見られ方も変わります。
しかし仕事に就く前に、仕事人生を充実させる手段を考えるのはなかなか難しいので、身近なスポーツを例にとって考えてみたいと思います。
それは野球でもサッカーでもテニスでもフィギュアスケートでもなんでもよいのですが、勝つことを目的としているのか、楽しむことを目的としているのか、自己の鍛錬や体力をつけることを目的としているのかによって、所属しようとする団体・チーム・仲間達が変わってきます。しかしそれは、逆のことも言えるわけで、自分が所属する団体・チーム・仲間を選べるように、相手の側も選ぶことができます。
仕事だからキャリアだから、良いポジションを得るのが難しいと考える前に、仕事人生に対する自分自身のスタンスと向き合うことで、まず自分の「資産」を再評価し、使い方を考え、更にどこに所属するのかを考えられるようになると思います。
最後に、正規社員と非正規社員の格差は今後拡大していくと思われますが、正規社員の解雇も年を追うごとに容易になっていくでしょうから、これからのキャリアに必要なことは「仕事人生」を常に意識した、次の自分をイメージした働き方となるものと思われます。