このように書くと「強み」は「人より抜きん出た才能や能力」というように誤解を与えそうです。しかし、心理学ではこのような「才能」や「能力」と区別して「強み」を扱います。
心理学で言う「強み」とは「精神的エネルギーを増大させるもの」です。ですから、私が「さんま」を「Mr.強み」と表現した理由は、「さんま」は人々を笑わせているとき、エネルギーが自分の中から湧き出て止まることがないという本人談を聞いたからです。この「エネルギーが湧き出てくる」ということが精神的なエネルギーが増すことです。
このように強みを発揮すると「抑うつ感を減少させ、充実感が高まる」ということも証明されています。
さらに重要なことは、「強み」は誰でも何かしら持っていることです。そして、「強み」の発見と活用は、自分自身に無尽蔵なエネルギーを与えてくれる妙薬なのです。
また、他者から自分の気づかなかった強みを指摘されたり、自分の強みを褒められたりすると本人のモチベーションが高くなります。
ポジティブ心理学では強みを24個紹介しています。最下段に紹介していますので自己チェックしてみて下さい。
一方、「人を笑わせる」という強みは、ポジティブ心理学で「ユーモア」という「強み」として表されています。その効用は、「他者や自分の緊張を和らげ、笑いというポジティブな感情を高める」というものです。そして、この「ユーモア」は強みの中でもかなり高尚な強みとして位置づけされています。
人が「笑う」ということは脳科学でも「心身ともに安静にし、ストレスを緩和する」ということが証明されています。そして脳を活性化し、ボケや痴ほう症予防にも効果的と言われ、老人介護の現場でも実践されています。
「強み」に話を戻すと、「強み」は「才能」とは別のものですので、必ずしもユーモアの強みがあるからといってユーモアが上手なわけではありません。例えばダジャレを言って、いつも周りに苦笑されていながら一人喜んでいるオヤジがいます。この人は「才能」が無いけどユーモアの強みを持っているケースかもしれません。この強みの発揮はダジャレを周りに言うことで本人が良い気持ちになりエネルギッシュになっています。ただ残念なことにユーモアの才能が無いので効果的に他者をポジティブな感情にできなかっただけなのです。
次に「強み」の見つけ方です。実は他者の強みを発見することは簡単ですが、それに比べて自分の強みを確認することは少し難しいものです。何故なら、「強み」は自分にとって「当たり前のこと」のように感じていることがよくあるからです。
ここでは、自分の強みの発見方法を紹介しましょう。
今までの自分を振り返り、最も充実していた時代を思い出してみます。
私の場合一番初め頭にイメージしたのは、高校生時代のブラスバンド部の部活動です。自分の光り輝いた時代です。当時さまざまな問題が起こりましたが、そのたびにわいわいがやがやとみんなで取り組んですごく充実した日々でした。今から考えれば、音感も悪く音楽の才能があるわけもなく演奏もヘタッピでした。でも、仲の良いメンバーと毎日のようにあれこれと関わりを持って「あーでもない。こーでもない」というのが楽しかったのです。
これは「良い人間関係が保たれるように尽力する。メンバーが活動しやすいように支援し、実現できるように動く」という活動が「リーダーシップ」の強みの発揮だったのです。
その結果、みんなから部長に推薦されました。しかし、私は楽器が下手で音感の悪い私自身が部長を他の人にお願いしてしまいました。
次に思い出す充実した日々は、新入社員で京都営業所配属になったコンサルタント会社の営業としての活動した時期でした。毎日新規企業の開拓で客観的にみるとつらい仕事でした。ところが私は、会社のトップと面談してみると、見ること聞くことが新しく「へ~」という感じで実に興味深いものでした。これは「今起きているあらゆる経験それ自体に興味を持ち、探求心を発揮して新しいことを発見することを好む」という「好奇心」という強みの実践でした。
私にとって「好奇心」の強みは、他の様々な状況の時において共通にある強みで、エネルギーの源泉のようなものと最近考えています。
みなさんも今までの自分を振り返り、是非自分の「強み」を再確認してみましょう。その強みを使用するだけでエネルギーが湧いて出てくることでしょう。
下記の24の「強み」について紹介文を参考に、自分の充実した日々、やりがいを感じていた時期を複数思い出しつつ、自分の「強み」が下記のどれに当てはまるか直観的に選んでみましょう。きっと2~3つは自分にピンとくるものがあることでしょう。
- 創造性:物事を行うのに目新しく、生産性の高いやり方を考える
- 好奇心:今起きているあらゆる経験それ自体に興味を持ち、探求心を発揮して新しいことを発見することを好む
- 向学心:」新しいスキルや知識体系を身につける。好奇心の枠に留まらず、既知の知識についても体系的に理解を深める
- 知的柔軟性:あらゆる角度から物事を考え抜いて検討する。決して安易に結論に飛びつかない。証拠に照らして判断を変えることができる
- 大局観:。自分にとっても、また他の人にとっても納得できるような世の中に対する見方をする
- 誠実さ:自分を誠実に語る。偽りなく存在する。自分の気持ちと行動に対して責任を持つ
- 勇敢さ:脅威や、試練や、困難や、苦痛などに決してひるまない。反対にあっても正しいことをきちんと言う。支持が得られなくても信念に基づいて行動する
- 忍耐力:始めたことを最後までやり遂げる。困難にあっても粘り強く前進し続ける。課題をやり遂げることに喜びを見出す
- 熱意:感動と情熱をもって生きる。物事を中途半端にしたり、いい加減にすることはない。人生を冒険のように生きる
- 親切心:人に親切し、人のために良いことをする。他人を助け、面倒を見てあげる
- 愛情:人との親密性、特に互いに共感し合ったり、思いやったりする関係に重きを置く。人と親しむ
- 社会的知性:他人および自分自身の動機や感情を意識している。異なる状況においても、そこでの適切な振る舞い方を知っている
- 公平さ:公平や正義という概念に従ってあらゆる人々を同様に扱う。自身の個人的な感情が他者への評価をゆがめることを許さない
- リーダーシップ:自分が属するグループが物事を達成できるように力づけ、良い人間関係が保たれるように尽力する。メンバーが活動しやすいように支援しるように動く
- チームワーク:グループやチームの一員としてうまく立ち振る舞う。グループに忠実で、その中で、自分のやるべきことを行う
- 寛容さ:過ちを犯した人をゆるす。人にやり直すチャンスを与える。決して復讐心を持たない
- 慎し深さ:自分の業績を自慢せず、自ずから明らかになるのに任せる。自分自身が脚光を浴びることを求めない
- 思慮深さ:注意深く選択する。不必要なリスクは決してとらない。後悔するような言動はとらない
- 自律心:自分の気持ちや振る舞いをコントロールする。規律正しい。自分の食欲や感情をコントロールする
- 審美眼:人生のあらゆる領域、つまり自然から芸術、数学、科学、日常の経験に至るまで、そこに美や、卓越性、あるいは熟練の技を見出し、それらの真価を認める
- 感謝:自分や周りに起こった良い出来事に目を向け、それに感謝する心を持つ。そして、感謝の気持ちを表す時間を持つ
- 希望:素晴らしい未来を描いて、それが達成できるように努力する。良い未来がもたらされると信じる
- ユーモア:笑いやいたずらを好む。人に笑いをもたらす。明るい面を見る。ジョークを考える(必ずしも口にしなくてよい)
- スピリチュアリティ:より高次の目的や、森羅万象の意味について、一貫した信念を持つ。より大きな枠組みの中で自分がどこに適するのかを理解している
最後に、強みの発揮は、「何をやるか?」ということが問題ではなく「どのようにやるか」ということがテーマです。言い換えれば、何をするにおいても「強み」を発揮することができるということです。