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「怒り」の功罪

心に「しなやかを」を 2017/03/25(土) 12:28

 

「怒り」の典型は、攻撃です。このやり方で最近成功したのは、トランプ大統領かもしれません。選挙の初期から弱腰の政府政策を攻撃し、怒りをぶつけるスタイルでした。最近ではツイッターで毎日のように何処かを攻撃するトランプ砲を発しています。

また、韓国の朴大統領への市民の怒りが大統領を弾劾まで追い込んだとも言えます。

この怒りの感情は、自分にとって脅威を感じた時「その脅威を自分で変えられる」と考えるため発生します。一方、「どうにも(自分では)変えられない」と考えた場合は、怒りではなく「悲しみ」となります。

例えば、バスケットボールの試合で選手に緊張感がなくズルズルと点差をつけられているような状況だとします。その時、監督がメンバーを集め怒りをあらわに表せば、その一瞬で緊張が走り選手の動きが変わるということはよくあります。いちいち理由を説明して諭すよりはるかに効果的でしょう。

また、仕事の現場においてマネジャーの一喝で、見違えるほど職場やメンバーの動きが変わります。しかし、マネジャーは「いつもこんな事をしていたのでは、このような効果はなくなるどころか、みんなソッポを向くことになる」ということを良く知っています。

「怒り」の表現は、他者を動かすには効果的な方法であることは間違いありません。

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たまに怒りを表さない人がいます。喜びや楽しさなどのプラスの感情は言葉にしやすく理解されやすいものです。一方、怒りなどのマイナス感情は、人が受け取ってくれない可能性があるため表現に躊躇し表現にはかなりの勇気と工夫が必要となります。これが怒りを表さない大きな理由のようです。また、その思いが強すぎると自分で「なかったことにする」というような抑圧をしてしまうこともあります。

喜怒哀楽の中で最も取り扱いが難しいのが、怒りの感情です。特に、対人関係上のリスクをともない、その対応も難しいものです。今回は、この対処法を紹介します。

まずは、「自分の怒りの取り扱い」についてです。

自分が怒りに突き動かされている時の最大の落とし穴は、前頭葉が働いていないことです。そのため、合理的な思考ができなくなります。要は「おバカさん」になっています。これはキレてしまって感情的になっている状態だけを言っているのではありません。イライラしている程度で自分では冷静さを保っているつもりの時も思考は停止しています。「おバカさん」とは「視野が狭く、今しか考えない」ということです。それは犬や猫と同じくらいの知能しか働いていません。誰も「ワンワンと吠える犬に対して言葉で説明し、会話してくる人はいませんよね。

では、「どうするか?」です。

まず、大切なことは「自分が怒りを感じていることに気づき、認めること」です。

怒りには「頭にきた」という強烈なものだけでなく、弱い怒りものもあります。

例えば、人には好き嫌いがあり、「同意できること」と「同意できないこと」があります。それにともなった感情は、「嫌い」とか「違う」という感じです。さらに嫌いなことが重なると「やめてほしい」という気持ちになり、やめてくれないと苛立ちを感じるでしょう。そして、それでも嫌なことが続くと「やめろ!」と怒鳴りたくなります。

怒りの程度が弱い時に表現すれば、それほど抑えようとする必要も無いわけです。せめて中程度のときに「やめてほしい」ことをはっきり伝えましょう。そうすることで、嫌なことが度重なったり怒りがたまったりすることを防ぎやすくなります。

このように怒りが小さい時に、小出ししておくことが最も重要です。このような自己処理を上手くできないと怒りのエネルギーを自分の中にため込んでしまうことになります。

このように怒りを抑えるだけでは収まるものではありません。怒りを抑え込んでしまうと、身体的な反応として血圧を上げ筋肉の緊張をもたらします。その結果肉体的な疾患につながってしまうことも珍しくありません。

ほかに次のような様々な非生産的なスタイルやパターンがあります。

自分に怒りを向けるというスタイルもあります。この場合は、罪悪感や自己嫌悪を感じることになります。加えてうつ状態をもたらすときもあります。

違ったパターンでは、その場で表現しないで他のものや他の人に怒りを向けるというスタイルもあります。この場合、かえって新たな問題を引き起こす元になります。

最悪のパターンは、怒りが怒りを生み「拡大した怒りが敵意や暴力を作り出す」という悪循環に陥る場合もあります。

最も多いパターンは、他者を攻撃するパターンです。

実は「怒り」の感情は、自分が起こしています。たしかに「怒り」は他者の言動がきっかけとなって起こっているかもしれません。しかし、自分がそれを気に入らなかったり、不満に感じるときに起こる気持ちが「怒り」です。ですから「非難すべき人は誰もいない」ことを確認しましょう。

人との関係で怒りを感じるのは、その人に対しての脅威を感じている場合が多くあります。そのとき、正直に「怖い」と言ってしまえば、相手はそれ以上の脅威を与えることをやめてくれるでしょう。

ところが、正直に脅威を受け止めないと、その脅威を与えた相手に対してそれを上回る脅威を与えようとします。つまり、更なる「強い怒り」を表現することで、相手を撃退しようとします。脅威を感じているにも関わらず自分の無力を認めず、相手に脅威を与え返すことでその場の優位を保とうとするのが、攻撃的な怒りの表現です。

このような場合は、激しい感情となっていることでしょう。その場合は、「3つ数えて、自分が何を変えたいか?を考える」ということをお勧めします。特に、深く深呼吸して1、2秒置いて、クールダウンして前頭葉を使い始めるということを意識することです。

最後に、「他者の怒りにどう対処するか?」についてです。

まずは、相手に怒りがある場合、上記と同じことが相手の中に起こっています。ですから、「怒りが相手のものである」ことを確認しましょう。

そして、相手の怒りを自分に伝染させないことが大事です。伝染とは相手の怒りの原因を「自分のせい」と受け取るとか、仕返しに自分も怒るという状態のことです。

最も重要なことは相手の怒りの気持ちを否定しないことです。具体的には、怒りを相手のものとして受け止めてその理由を理解しようとすることです。そして、それに対応する意志があることを相手に示すことが大切です。

同時に、自分の気持ちを相手に伝えることです。例えば、「怖い」「動揺している」「ちょっと(私のために)待ってください」などの自分の防衛的な気持ちの表現をおこないます。そして、相手の反応を待ちましょう。

私の経験で、相手の怒りが収まらず次から次へと攻撃的な事を言い続けられたときがありました。その時「〇〇さん、怖いです」と冷静に言ったことがあります。さすがに、この瞬間、相手は言葉を詰まらせ静かになりました。その後、お互いに比較的冷静に話し合うことができました。

やはり、怒りと怒りのぶつかり合いである「対立の構図」は、猛獣同志の衝突と同じです。できるだけ早く人間の対話に戻したいですね。

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