でも、自ら何もすることなく「淡い希望」だけを思い描くということではありません。可能性に目を向け、自ら事態を切り開くというところと結びついていることが重要です。その意味では、自信の裏付けが必要です。自信が無ければ希望も持てないということです。小池さんの希望の党も自信の裏付けがあってほしいですね。
「自信」という言葉は心理学用語でなく一般用語です。これでも充分ですが、心理学では「自己効力感(セルフエフィカシーSelf Efficacy)」という単語をよく使います。この意味は「その人の持つ目標や成果の実現に関しての自己能力への確信と信頼」というものです。
この自己効力感があれば、「自分がうまくできそうだ」という予想につながり、実際の行動が起されます。しかし、自己効力感が無いと「うまくできそうにない」という予想になるので行動を起こさないということになります。
自己効力感は、人の行動を決定する重要な要素です。そして、それは変えられるものです。
下記は、「(一般性)自己効力感尺度」と呼ばれる検証済みの16の質問(GSRS)です。Yes、Noのどちらかで応えて下さい。(採点の仕方は質問の下に掲載)
- 何か仕事をするときは、自信を持ってやるほうである。
- 過去に犯した失敗や嫌な経験を思いだして、暗い気持ちになることがよくある。
- 友人より優れた能力がある。
- 仕事を終えた後、失敗したと感じることのほうが多い。
- 人と比べて心配性なほうである。
- 何かを決めるとき、迷わずに決定するほうである。
- 何かをするとき、うまくゆかないのではないかと不安になることが多い。
- ひっこみじあんなほうだと思う。
- 人より記憶力がよいほうである。
- 結果の見通しがつかない仕事でも、積極的に取り組んでゆくほうだと思う。
- どうやったらよいか決心がつかずに仕事にとりかかれないことがよくある。
- 友人よりも特に優れた知識を持っている分野がある。
- どんなことでも積極的にこなすほうである。
- 小さな失敗でも人よりずっと気にするほうである。
- 積極的に活動するのは、苦手なほうである。
- 世の中に貢献できる力があると思う。
質問項目1,3,6,9,10,12,13,16,はYesを1点、Noを0点
質問項目2,4,5,7,8,11,14,15,はNoを1点、Yesを0点として合計します。
私の経験値では合計10点以上で高め、6点以下では低めというのが目安のようです。
一般性自己効力感が高い人は、困難な状況において次のような特徴があります。
- 適切な問題解決行動に積極的になれる。
- 困難な状況でも簡単にはあきらめず努力することができる。
- 腹痛や不眠などの身体的ストレス反応や、不安や怒りといった心理的ストレス反応を引き起こさない適切なストレス対処行動ができる。
要は、一般性自己効力感が高ければ、ストレス状況に直面しても身体的・精神的な健康を損なわず、レジリエンスが高くなるということです。
次に、自己効力感の高め方についてです。
自己効力感(セルフエフィカシー)は次の4つによって強化・形成されると言われています。
①達成体験
実際に自分自身で行動し、達成できたという体験のことで、これが最も自己効力感を定着させると言われています。
ポイントは、小さな成功体験を積み重ねることです。例えば、「明日の朝いつもより30分早く6時30分に起きる」ということを自分で決めて、確実に実行します。難しければ、10分前の6時50分でもよいのです。重要なことは難しいことを達成することではなく、確実に実行するということです。そして、それが実行できたら、「今日の午後、お菓子は食べない」という違うことを目標にして、さらに確実に実行します。このような成功体験を通じて、「自分の決めたことは、自分で実現できる」というように自分で自分を信用できるようになることで、自己効力感がアップしていきます。もちろん、徐々に目標の難易度を上げても良いですが、実行できるまでトライすることが重要ですので、難易度アップにはご注意を。
②代理経験
他者が達成している様子を観察することによって「自分でも出来そうだ」と学習することです。例えば、自分の知人が、不可能だと考えられていた偉業を達成すると、それが代理体験となり「自分にもできるのではないか」という自己効力感が発生することがあります。
本やブログを読んで影響を受けるとか、先輩の話を聞いて「自分もやってみよう!」と行動に繋がることも代理経験です。
例えばオリンピック選手がいると、次々とオリンピック選手が育つスポーツクラブなどは典型ですね。また仕事でも、何か伝説的な事を成し遂げた人やモデルにしたい人が近くにいていろいろと話すうちに、自分もできそうな気になるのも代理経験の一種です。
③言語的説得
他者から達成可能であることを言語で繰り返し説得されたり、励まされたりする体験のことです。
親から「あなたなら出来る」「才能があるからあきらめずに努力すれば」と言われ続けると自己効力感が高くなります。しかし、言語説得のみによる自己効力感は、容易に消失し易いと言われています。おだてて木に登らせることはできますが、急に覚めるので気をつける必要があります。
④生理的情緒的高揚
苦手だと感じていた場面で、落ち着いていられたり、赤面や発汗がなかったりする体験は、自己効力感が高められると言われています。当たり前の話ですが、場数を踏んでなれるとよいということになります。
芸能人やビジネスの世界でリーダーとして有名な人の中には、「人前で話すのは昔できなかった」と言う人はたくさんいます。やはり人は変われるのですね。
最後にこれらの経験も、経験しっぱなしでは効果が少ないようです。これらの経験を一つ一つ意識化して、噛み締めることが重要です。是非、夜寝る前に、よい経験があれば、それを振り返ってみることをお勧めします。