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CMNニュース 出発点

新しいコミュニティの構築を目指して 2015/09/05(土) 13:19

前回のCMNニュースでは、わが国の若者の5割がキャリアの初期的段階で躓いている事をデータに基づいてご紹介した。今回はその5割はどうするのか、あるいはどうなるのかを考えて見たい。

まず、躓きの原因として、大学卒業時点での就活の失敗が上げられる。景気の山谷によって就職率は変わるのでそれに反比例する形で失敗率も変わるが、平均して大学生の2割、人数にして約10万人が「就活」というシステムに乗り切れずに失敗している。

これは、需給バランスから見て需要(求人)が少ないために10万人の職がないわけではない。下図は1991年から2016年までの大卒の求人倍率だが、この25年間で需要が供給を下回ったのは2000年のたった1回しかないのだ。つまり、働くところが無くて正社員になれないのではなく、「就活」に失敗しているのだ。

求人倍率の推移


その失敗の多くは、途中で諦めたというものだ。有名企業(学生の就職人気が高いのは、一流企業でも大企業でもなく「有名企業」)をターゲットとして、数十社「お祈り(不採用通知の末尾に「お祈りしております」と書かれているところから就活用語で不採用を表す)」されたあげく諦めてしまうというパターンが多い。その原因はおおむね3つほどある。

一つは、失敗や挫折に対する弱さだ。それまでの人生であまり深刻な失敗を経験してこなかったり、緊張を強いられる経験が乏しい人は、就職活動そのもののストレスに耐えられない場合がある。就職の場合は不採用理由を明かさない企業がほとんどなので、なぜ不採用だったか理由がわからず、自分が全人格的に否定されたような受け止め方をする人も多い。慣れていないのだから当然なのだが、友人も少なく情報不足の上、周囲のサポートもないような環境だと折れてしまう場合が多い。

二つ目に、就活戦略の欠如が上げられる。たとえば大学フィルターの存在を知らずはじめから採用される見込のない有名企業だけをターゲットにしたり、数多く当たるために各社の内容を十分調べずに面接に臨み場当たり的な対応をしたり、過密スケジュールで取りこぼしをしたりといった活動そのものの失敗だ。

そして三つ目に、大学受験と同様に既卒でも就活ができると考えている人もいる。もちろん就活はできるが、採用される確率は極めて低い。新卒時に採用されなかった企業に既卒で採用されることはまずない。大学受験は現役も浪人も同じ条件で試験が受けられるが、就職における「既卒」は食品にたとえれば賞味期限切れ寸前ぐらいの評価になってしまう。

この様な思い違いが重なって、「時間切れ」や「諦める」という結果なってしまう場合が多い。

この様なケースは翌年「既卒」として就活に臨む場合もあるが、とりあえず派遣やアルバイトで働きながら考える場合が多い。お金を稼ぐ必要もあるだろうし、働くことは決して悪くないが、就活一本に絞ってもうまくいかなかったことを「既卒」という不利な立場で、働きながら行う事は現実にはかなり厳しい。

そして、派遣やアルバイトでも新入社員と手取り収入が変わらないこともあって、そのまま数年を過ごしてしまう場合も少なくない。派遣やアルバイトが専門スキルの身につくものであればその道でプロとしての腕を磨いていく事も可能だが、ほとんどの場合は単なる労働力としてしか評価されないので収入はすぐに頭打ちとなる。

一方、大卒の平均3割は3年以内に辞めるといわれているが、これは既卒の就活とはまた少し違った「第二新卒」枠での就活を行う場合が多い。これは一度就職している分だけ既卒よりは評価が高いので就職に成功する確率は高くなる。しかし、この場合も職歴と言えるようなものではないので、はじめに入社した企業よりランクの高い企業に入れる可能性は少ない。もちろん条件的には最初よりよいところもあり、はじめに入社した企業がいわゆるブラック企業だったような場合は早い段階でやり直せてよい結果に繋がる場合もある。

ただし、自分の理想とは違っていたとか、やりたい仕事ではなかったというような理由での退職は、次の仕事でも同様の結果になる可能性が高い。働くことに対するリアリティの欠如や自己認知の甘さが根底にある場合は、「理想の仕事」という妄想を追いかけている可能性もあるからだ。それが妄想なのか、実現できるものなのかは自己判断が難しいところなので、これも信頼できる先輩や専門家かからのアドバイスが求められる。

早期退職者のもうひとつのパターンとして、厳しさに耐えられない(体力的・精神的・経済的等)から退職したというものがある。この様な場合は派遣やアルバイトの方が楽な上に当初は新入社員と手取り収入が変わらないこともあって、そのまま過ごしてしまう場合が多い。

その結果が今後どうなるかはわからないが、過去の就活失敗者のその後の経緯を振り返って見ると、

非正規雇用労働者の数は、1990年代前半から増加し、2015年は約1980万人と、労働者全体の38%に達している。ここ数年は景気が安定し採用環境も改善しているため34歳までのいわゆる「若年フリーター」は減少している。しかし、35歳以上の「中年フリーター」については増加にする一方だ。
 その実態は政府の明確なデータが存在しないが三菱UFJリサーチ&コンサルティングの推計によれば、中年フリーター(35〜54歳の非正規の職員・従業員、女性は既婚者を除く)の数は90年代は130万人台だったものが、2015年には273万人に達している。

この推計から数字だけ見ると、34歳までは正社員としての登用の可能性があり、35歳を過ぎるとフリーターから正社員は難しくなるように見えるが、35歳以上でも専門スキルがあったり、過去に職歴として認められるモノがあればまだ可能性は十分ある。

逆に、大卒後正社員としての経験が一度もないような人は34歳以下でも難しい。年齢で言えば一つのラインが27歳で、それ以下であれば人物次第でゼロから教えても間に合うと判断されるケースも多い。

2000年代に入ってから大卒時点で就活に失敗した人が毎年平均10万人出ているが、中年フリーターも1年に10万人ずつ増えて15年で150万人増えている。もちろん、大卒時点で就活に失敗しても後から正社員になる人もいるし、正社員を辞めてフリーターになる人もいて出入りはあるが、おおむね両者の数字は一致している。

この内訳について、次回は更に内情を分析してしてみたい。

 

堀口卓志

人と組織の問題に30年以上関わってきましたが悩みがつきません。
マネジメントセオリーの多くは 未だに 半世紀以上も前の米国の研究に依拠しておりますが、インターネット以降それらが次々と破壊されてきた感があります。
科学技術のめざましい発展に比べればこれは当たり前のことかもしれません。
私自身も含む旧世代は過去の知識に過度に依存せず、評論をするのではなく、自らが変化にチャレンジすることによって解決の道筋が見つかると考えています。