その日々の裏側は、初日は深夜便で日本に飛んで、睡眠不足で到着した朝から晩まで脳がフル回転。「予想以上に脳がつかれるな」と思ったので、毎日「ではまた明日」とホテルロビーで仕事が終わると、客室ではTVもつけず脳を休める。朝を「無」の状態からスタートさせる・・・・の繰り返し。
与えられた期間中にVery Bestのパフォーマンスを安定して出すコツは「体調管理に限るな~」と思う40代。睡眠時間の少なさを誇りにしていた20~30代と違うので、もう無理はできないし、そういう無理は、もうしない。
さて、その一方、突然ですが、シンガポールにて日本人の現役男子大学生との共同生活が始まりました。
しかも、それだけではないんです。
「家に工事が入ったので、お義母さんと義妹を預かってほしい」と突然言われ、同じタイミングで、極小な我が家での6人シェアハウス生活が始まりました。
なんてこった。
義理の家族はとても珍しい種類の人々で、私たちの日常のルーティンを一切邪魔せず愚痴もゼロ。「いつも通りに過ごしてね。気にしなくていいから」と言われたことをそのまま信じられる系。私は彼らのためにごはんも作らず、お茶も出さない。彼らは自分が好きなものを買って食べている。それでいいらしい。「嫁として」という期待も、そもそもない。あるがままで良し。
もちろん、私が自分がお茶を飲む時、子供に果物をむいた時、ついでだから「一緒にいかが?」と声はかけますが、相手が飲みたければ飲むし、食べたくなければ食べないので、「あらかじめ、ちょっと多めに用意」という気遣いはしない。
逆に彼らが食べ物を買う時、「私たちの分を買ってこないで」ともお願いしている。食べ慣れているものが違うので、良かれと思って大量に買ってこられても、食べきらずに捨てることになりがち。同じ食卓を囲んでも、それぞれが違うものを、好きなように食べるのが、「多様性の共存」のセオリーに思える。だから「One Dining -ひとつの食卓―」を、私の会社の名前にしている。蛇足ですが。
そんな、私と義理の家族との共生も、ある意味「どうなることやら?」でしたが、そこに、日本から男子大学生がやってきました。(彼が我が家に来ることは、そもそもあらかじめ決まっていたのですが)
さてここで、ポイントが。義理の家族はイスラム教徒です。
義母は普段、自宅では頭にスカーフをまかず、Tシャツなど気楽な恰好で過ごしていますが、「外の人」しかも「男性」と共に暮らす。これは彼らにはちょっとした「大変な出来事」。お義母さんは、Tシャツは着ていますが、大学生がいる間は、家でも帽子をかぶって過ごしているので、やっぱり少し気を使っています。
同時に、大学生にお願いした「多様性への対応」基本ルール。
「彼らが我が家に滞在している間は、家でビール等を飲まないこと。お酒は外で飲んできてほしい。自炊する時、ソーセージやベーコンを含む、豚肉を調理しないでほしい」
大学生は、「今まで、何が豚肉か・・・なんて、考えたこともなかったです。そういうことか・・・」と、軽いカルチャーショックもあった様子。具体的に理解していただくために、一緒にスーパーに行って、どれがOK、どれがダメかを説明しながら歩くと、イメージがつかめた様子で、すんなり「これはOKなもの」だけを選んで、自炊してくれています。
この理解力と柔軟性は、この学生さんの特別に素晴らしいところ(に見える)。私が若い時、こういう感性がなかったな~。なんでも「どうしてこうなの?」「どうしてダメなの?」と、質問の形をとって、突っかかっていた気がするな~ と、過去の自分を反省することしきり。
学生さんは、昨年はオーストラリアでワーキングホリデーを経験してきたおかげで、メンタルも柔軟でいろいろ受け入れる素地が鍛えられているのかもしれません。海外生活の「入口」を、彼はなんなくクリアしているのが、素晴らしい。(本人はいろいろ考えているかもしれませんが)
そんな、舞台裏もありつつつ、ウサギ小屋に人口過密なAlex邸。
それぞれ、ぺらっぺらなマットレスを1枚ずつ配給され(普段はゲストにマットレス2枚がさねですが、足りない・・・)、学生さんには個室、義家族の部屋、私たちの部屋・・・と分けていますが、同居人同士、それぞれに控えめに過ごしてくださっているおかげで、思いがけず結構楽しい日々を送っております。
そんな濃い環境の中、学生さんがシンガポールでどんなことを考えて人生を模索しているのか、また「うちの生徒も送りたい」「僕も/私も行ってみたい」という方に、その方法をお伝えする。それはまた次回のお話とさせていただきます。
それでは皆様、また来月お会いいたしましょう。